働く広場2025年5月号
8/36

く計測機器のソフト開発にたずさわってきた。 ところが40歳手前の2000(平成12)年、網膜色素変性症の類縁疾患である網膜症と診断される。徐々に症状が悪化し、2009年には「身体障害者手帳」2級を取得した。西本さんは、「職場にも伝えましたが、当時は社内で初めてのケースだったようで、産業医も人事部も戸惑う部分が多かったようでした」とふり返る。 そこで西本さんは、手帳取得時に京都市から紹介された視覚障がい者向けの福祉施設「社会福祉法人京都ライトハウス」(以下、「ライトハウス」)に相談した。 「ライトハウスから会社側に『視覚障がいとはこういう状態で、どんな職場環境にしたらよいか』を説明してもらい、スムーズに進めていけました」(西本さん) 上司と相談しながら業務のやり方を変え、産業医の判断により出張禁止となった。白杖を使うようになってからは、夕方の通勤歩行が危険なため、朝は30分前倒しの時差出勤と、1日7時間勤務に変更してもらった。 2015年からは週3回の在宅勤務も開始。「当時は障がいを理由にした在宅勤務は初めてだったそうですが、所属部長さんたちに提案してもらい、ありがたかったですね」と西本さん。自宅にはパソコンやモニター、音声読み上げソフトなど、職場では光のまぶしさを軽減するパーテーションもそろえてもらった。こうした機器の一部は当機構(JEED)に就労支援機器の貸出しを申請し(※2)、効果を確かめたうえで会社側が購入したものだ。 西本さんはライトハウスで、白杖を使った歩行トレーニング(特別有給休暇扱い、週2回1カ月半)や点字トレーニング(特別無給休暇扱い、週1回9カ月)も受けた。その一方、職場から最寄り駅までの歩道の白線が見えづらくなっていたことから、堀場製作所側が警察署に相談し、京都市が計画前倒しで塗り直した。 西本さんはいま週1回の通勤を続けているが、「一番助かっているのが、通勤時の同行支援です」と話す。2020年から国が実施している雇用施策と福祉施策との連携による支援であり、JEEDの重度訪問介護サービス利用者等通勤援助助成金と京都市の重度障害者等就労支援特別事業を組み合わせて利用することで、事業主や利用者の費用負担を軽減できる制度だ。堀場製作所も補助を上乗せする形で西本さんの負担を軽減している。 もともと堀場製作所の障がい者雇用は、特に障がい者雇用枠を設けず通常採用で進められてきた。その一人、聴覚障がいのある奥おく石いし拓たく斗とさん(29歳)は、2014年に入社。基盤製造や工程管理を経験し、2018年からは生産本部生産センター生産2部Medicalチームで医用機器の製造を担当。いまは医用生産の工程管理を任されている。技能士1級の資格を取得し、2020年には全国アビリンピックの電子機器組立種目にも出場している。 奥石さんは、事前質問に文書でていねいに答えてくれた。それによると、入社後に一番苦労したのはコミュニケーションワークショップなどで相互理解※2JEEDで実施している就労支援機器の貸出しの詳細は以下をご覧ください。https://www.kiki.jeed.go.jp/開発本部R&Dプランニングセンターグループ開発基盤部Design&Simulationチームの西本明弘さん西本さんは、計測機器のソフト開発にたずさわっている(写真提供:株式会社堀場製作所)生産本部生産センター生産2部Medicalチームの奥石拓斗さん働く広場 2025.56

元のページ  ../index.html#8

このブックを見る