経験豊かな高齢者は会社にとって貴重な存在ですが、彼らが60歳を超えてもこれまでと変わらぬ戦力であり続けるには企業としての工夫も求められます。高齢者にとって体力の低下などさまざまな身体機能の低下は個人差があるものの避けては通れぬものであり、そのような低下を補いながら、これまでと変わらぬ成果を出してもらうよう、設備改善等の取り組みが必要です。これらの取り組みは労働安全の観点からも大変重要です。
作業スピードや男性の感覚だけの視点で業務改善を進めると、高齢者や女性に負担がかかる業務の進め方になりがちだという反省を踏まえ、大きな水槽を取り扱う業務では、水槽を小さくして誰でも無理なく取り扱えるようにしました。
塗装場と検査場が作業場から離れているため、移動を少なくするために、離れた場所にある塗装場と検査場を作業場の近くに新設し、重量物の運搬距離を短縮しました。また、重量物の持ち上げ・移動をフォークリフトに代えて走行クレーンを使用することにより肉体的負担を軽減しました。
屋外で、中腰姿勢の仕上げ作業を行っていたため、作業台を設置することにより、高齢者にふさわしい職場環境に整備しました。
①重量物の運搬への対応として、運搬するボックス全てにキャスターを取り付け。
②鋳造金型の取り付けや取り外しに簡易ホイスト(巻上機)を設置。
③製品のトラック積み出しにテーブルリフター(昇降装置)を設置。
④バレル研磨機の材料投入に自動リフトを設置。
機械現場の測定器がアナログ式で数値が読みにくいため、高齢者でも読み取りやすいデジタル式の測定器に替えました。その結果、視覚的負担や肉体的負担が軽減され、高齢者にとって働きやすい職場になり、同時に生産性も向上しました。
工場内の照明が、地上10メートル以上の所にある屋根裏部屋部分についており、照明器具も老朽化していたため、照度が不足していました。そこで、照明器具の数を28個から50個に増やし、照明の位置をできるだけ下に降ろす等の改善により照度を確保しました。
NC旋盤などの自動機械の素材切れ解消のために目視作業ランプを設置しました。また、機械操作ミス防止のために、複数のセンサーを取り付けました。
直営店での漬物の小売り販売では、再雇用で働いているベテランの女性スタッフが多く活躍していますが、パソコンが苦手で入力等の間違いも多く、また年齢とともに物忘れも増えてきて、発注のし忘れなどもたびたび起きるようになりました。当社は「発注ミスや注文のし忘れはシステムで防ぐ」という考えのもと、発注システムの改善に取り組みました。「パソコンが苦手な年配者でも簡単に操作できるよう、手順を極力簡単にする」という改善コンセプトを据え、単に数字だけを入力するだけのシステムに改善しました。改善によって、ベテランでも無理なく発注業務ができるようになり、発注ミスなどは相当改善されました。また、簡単に入力できることで、後回しにすることがなくなり、発注忘れが起きにくくなりました。ベテランスタッフの強みである「接客に集中できる態勢ができてきた」と当社ではシステムの改善を評価しています。
ヒューマンエラー対策として、2つの方向が考えられます。
①ヒューマンエラーが発生したとしても労働災害につながらない対策(ハード面)
例)設備面の対策
②ヒューマンエラーの発生を抑制する対策(ソフト面)
例)作業者に対する安全教育、安全指導
水を使う職場において転倒事故を防ぐための配慮として、就業前に長靴の底の減り具合を全員で点検すること、工場の床材にお風呂場の滑り止め用床材を使用すること、があげられます。
足場の改善、増設、手すりの設置、梯子から階段への付け替えなども行ったり、作業場、足場に向かう際に、一つのルートだけでなく迂回路を設けるなど、従業員の意見を参考にしながら働きやすい環境を作るように心がけています。散水設備も設け、粉じん対策も行っています。
プラント設備の階段に手すりを付けたり、色を塗ったりするなど、現時点で対応可能な事前の措置を施し、高齢の従業員が働いているという前提で作業環境の改善を進めています。高所作業の安全確保のために、新たにクレーンを設置するなどの対応も行っています。