高齢者の中には体力低下などさまざまな理由で今まで任されてきた仕事を続けるのが難しい場合があります。そこで高齢者が働ける場を新たに創造している企業があります。また、社会的貢献も兼ね地域活性化や高齢者活用を充実させるために高齢者を活かせる場を創出している事例があります。
技術的な問題や専門性の高い案件、事業部を超えた技術的テーマについて対応する部署として「技術統括室」を設置しています。技術統括室は社員からの新規事業などの提案に対する窓口にもなっており、提案内容の技術的な面について深く検討する役割を担っています。
平成21年に、バスの更新や中古車の再生、事故車の修理等を行うリニューアル事業を立ち上げました。新車需要が減少する中、従業員の新たな作業を確保し、少しでも売り上げに貢献できればとの想いもあり、年度売上計画を立案し、新規事業としての位置づけも明確にしました。ラインを外れた高年齢熟練技能者に注目し、溶接、板金、塗装などの高い技能や「自分ならできる」という高いプライドを活用することで本事業が成立しました。
かつて外部に委託していた工場の守衛を内製化しました。守衛業務に異動する嘱託雇用者には、「守衛として会社を守ることに誇りを持ってもらいたい」「保安要員として重要な責務である」との意識づけを行っています。また、守衛の服装も、保安要員としての威厳のあるものを用意したことで、「警備員服がかっこいい」と評判です。
会社の競争力強化のため、技能工についてはOJTを中心に、1人で複数の機種を扱えるよう多能工化を進めています。
OBを雇用する関連会社をつくり、紙面編集(校正・校閲・特集紙面など)を業務委託しています。
写真記者を長年続けてきた記者が、資料室でフィルムや写真の整理を担当し、若い記者たちからのさまざまな問い合わせにはすぐに回答します。「生き字引がいて助かった」と感謝され、生きがいを感じています。
当社は多品種一品物による受注生産が中心であり、仕事によっては、経験の少ない若い従業員では対処できない場合があります。こうした場合は要所に配置されているベテラン従業員が、かつての経験に基づき、試行錯誤を繰り返しながら、若い従業員を指導しつつ仕事を進めることになります。日頃から、力仕事は、同じ工程にいる若い従業員が役割を担うようにしており、定年後の嘱託社員に限らず、50歳代後半から60歳代の従業員は、なるべく「頭を使う仕事」を中心に従事してもらう風土が社内に定着しています。
長年の経験を活かし、切断工程における鍛造部との調整役として円滑な業務遂行に貢献しているベテラン従業員がいます。責任者として下流工程である7つのハンマチームの各リーダーに対し、様々な調整を行っています。特に、工程会議での想定とは異なる事態が生じたときには、臨機応変の対応で全体の段取りがスムーズに運ぶよう調整しています。
鍛造現場にいるベテラン従業員の中には、長年の経験により不良品が出た原因までわかる人もいます。彼らを小物部品の検査へ配置転換したことで不良品のフィードバックが早くなり、また、現場特有の言葉がわかるため、現場とのコミュニケーションが活性化されました。おかげで「現場で対策しないと不良品は減らない」という考え方が現場に広がり、従業員たちの意識が変わりました。
修理・サービス事業など、顧客の家に直接訪問する業務は、ベテランの高齢者の方が信頼を得やすい分野として着目しています。
高齢者の役割として職場の清潔の維持を専門に担当する業務を新設しました。工場の機械のスピードについていけなくなった高齢者がいた場合、機械のスピードを落とせないため、本人とよく話し合った上で、ゴミの削減、窓やドアの清掃、草取り等の軽作業を担当してもらっています。
営業担当者は、定年を機に荷揃い(ピッキング)業務を担当してもらうようにしています。定年を機に営業業務から離れてもらうのは、取引先のバイヤーが若年化しており、高齢の営業担当者との年齢ギャップが年々拡大し、高齢者が営業を続けることに対するメリットが少ないため、高齢者には負担の少ない内勤業務を担当してもらいたいというのが主な理由です。「荷揃い作業は、輸送の際に商品が傷まないよう、商品特性をよく見極めて積み込むことが必要。営業の経験者は、それをよく理解しているので、改めて教育をしなくても、完璧にやってくれる」というように、荷揃い作業を営業畑の高齢者に任せることに、当社はメリットを感じています。
地域との連携を強めていく方策として、ビジネスマッチング(異業種交流)の場の提供や、商店会など地域の各組織との交流の促進など、地域の中で生きる信用金庫としての新たな取り組みを進めています。今後、こうした取り組みを根付かせ、活性化させていくために、再雇用者の経験や人脈を活かしていきたい。
修理担当者(67歳と68歳の2人)を置き、随時、危険な箇所の修理や以前壊れた箇所の点検を行い、現場での安全の確保に努めています。各現場で不具合等が見つかれば、その都度対応するようにしています。
技術者に対しては、プログラミングのスキルだけでなく、業務知識を向上してもらうため、顧客サポートの部門に週に1度の当番制で入ってもらうということを行っています。技術職の場合、コミュニケーション能力が高くないこともあるため、このような業務が苦手な人もいますが、制度化することで、苦手意識の克服につなげ、顧客サポートもできる技術者の育成を目指しています。
職種転換として、開発部門から顧客サポート部門に異動した技術者もいます。これは、本人の希望と職場での判断から、話し合いにより異動を実施したものですが、コールセンターでは、テスターやマニュアル作成も行っているため、技術職で蓄積した知識を活かすことができています。
高年齢従業員や若年層に対してコミュニケーションの大切さを伝えたり、職場内のコミュニケーションが活性化されるような施策を検討・実行したりすることで、伝承を円滑にするための関係性や雰囲気づくりを支援することが望まれます。
以前の人事評価制度では年功的要素が強かったが、資格等級制度の導入により成果主義的な傾向が強くなってきたことで、従業員のストレスへの対応も進めています。メンタルヘルス施策としては、年に2回ストレスチェックを実施し、メンタルな問題を感じている従業員には、本人希望により専門のカウンセラーに相談できる体制となっています
社内では、「さん付け」で呼び合い、社長も「さん付け」のフラットな組織となっており、昇進スピードの違いや継続雇用により、かつての部下が上司という場面になっても対応できる職場雰囲気の維持につとめています。
高齢従業員と若手従業員間で、食事会などのコミュニケーションを取る機会を会社として予算計上をして設定し、世代を超えた社内での関係構築を目指しています。
高齢者は若手と関わることで、若い人がどんなことを考えているのかを知り、若手へ技術・経験・知恵を伝承するモチベーションを高めてもらうことを狙い、企画しています。
いわゆる“年上部下”への対応に悩んでいる若い管理者も少なくありません。かつての先輩や上司を部下として扱うことに心理的な抵抗が働くため、なかなか有効な方法が見出せないようです。その処方箋として、積極的にコミュニケーションをとりながら、部署の目標をよく理解してもらい、その目標達成までの過程では、できるだけ「相談する」「知恵を借りる」といったスタンスで年上部下の自尊心を保ちつつ、豊富な経験や知識を引き出していくようにします。もちろん、年上部下の仕事ぶりなどで問題があれば、先輩や元上司であっても、毅然と対応することも必要です。
上司と部下、年配者と若年者といった関係性が逆転することによって、人間関係がぎこちなくなってしまったり、指示命令が難しくなったりすることはよくある悩みです。
このような場合には、高齢者本人だけでなく、現場の管理職にも業務の進め方や意識を変えてもらう必要があります。以下のアドバイス例も参考に、それぞれにどのような役割が求められているのかをきちんと説明し、理解してもらうようにしましょう。
上司と部下がお互いの役割を認識・理解することが、マネジメントのポイントとなります。高齢者雇用にあたっての研修・セミナー等で、定年後に働く際の心構え等を説明することも効果的です。
例えば、突発的な休みが少ないこと、勤務態度が真面目であること、定着率が良いこと、仕事が丁寧であることなど、常日頃から管理が行き届いていると信頼される状態をつくっていれば、50歳以上の方を派遣するときにも、「あの会社からの人材だから大丈夫」という安心感を持ってもらえています。