5 高齢者間で分業するには?(ワークシェアリング等)

高齢者の望む働き方は多様です。フルタイムを望む人がいる一方で、午前や午後だけ、または1週間のうち数日間だけ働き、残りの時間は家族の世話や趣味、また地域の活動に充てたいと考える人たちもいます。健康の問題も増えるため、通院等で時間を取りたい人もいます。高齢者の望む働き方に配慮する必要があります。

高齢者間で分業するイメージ画像
  1. 【主な対策】
  2.  対策1.働く時間をシェアする
  3.  対策2.働く場所をシェアする
  4.  対策3.仕事の中身をシェアする

各業界の取り組み

対策1.働く時間をシェアする

【事例】 子育て社員を補完して、高齢社員が朝や夕方に勤務 《平成24年 学習塾業》

学習塾業界における就業時間の問題(夜が遅い、就業時間が長い)は、構造的に顕在する問題です。当塾でも、優秀な女性社員にとって出産や育児に伴う勤務時間の問題が大きく、子供を預けてフルタイムで働くことが困難でした。優秀な講師を確保することは経営競争にもつながるため、ワークシェアリングなどによって、優秀な講師に長く働いてもらう仕組みづくりを行っています。ワークシェアリングの担い手は、時間的な制約が比較的少ない高齢者が適しています。

【事例】 代番(リリーフ)要員制度 《平成24年 パルプ・紙・紙加工品製紙業》

リリーフ要員として2名が2勤2休を交互に勤める形態、182日/年の勤務
(例)A氏 朝番 - 朝番 - 休み - 休み - 昼番 - 昼番 - 休み - 休み
  B氏 休み - 休み - 昼番 - 昼番 - 休み - 休み - 朝番 - 朝番

【事例】 ワークシェアの発想を取り入れた再雇用制度の導入 《平成21年 百貨店業》

再雇用者の増加が見込まれる中で、当社では、定年以降の多様な就業ニーズに応えることで、定年退職者の持つ能力を活かしていくことをねらいとして、ワークシェアの発想を取り入れた再雇用制度の改正を行いました。具体的には、社員・有期雇用契約者に関係なく、勤務時間の短いコースを設け(表参照)、様々な生活ニーズを有する60歳以降の再雇用者が、本人の生活に合わせて働けるように制度設計しているのが特徴です。
特にパートタイマーは、主婦層が多いため、夕方以降閉店までの時間帯に、売り場で販売に従事する労働力の安定的な確保が難しい状況となっています。そこで、新制度では、夕刻以降の時間帯での勤務を希望する人を増やすことをねらいに、閉店時間まで働く人の時間給を高くするという工夫を行いました。

再雇用者の働き方のコース

対策2.働く場所をシェアする

【事例】 部局間における人員のミスマッチ解消策 《平成23年 医療業》

当院の人事部は、まず各部局・部門の管理職に対し、職業能力別の「人材ニーズ」と「人材蓄積」状況の調査を依頼しました。各部局では、部局の職員ごとに全ての職員を「職務職能表」で分類し、職業能力レベルをランク付け(A~E)して名前を書き出すとともに、それぞれの部局で必要な人材の人数をレベル別にカウントさせました。この作業で、どの部局に人材がどれだけ余っており、あるいはどれだけ足りないか(バランスシート上のアンバランス可視化)が明確になります。当院の内部労働市場では人員のミスマッチが目立っており、特に管理部門の人手不足に悩んでいました。当院では、「職務職能表」で各職員の管理能力から現場のサービス技術の蓄積状況を、幅広くかつきめ細かく把握していたため、求人広告などの外部労働市場に頼らず、内部労働市場で人材を捜すことが容易にできたわけです。人材ニーズを人材蓄積が上回る部局の職業能力蓄積レベルを職員個別に洗い出し、その中から管理能力に長けた人材に目をつけました。

【提言】 「仮想高齢人材派遣会社」の院内設立によるエイジレス活用 《平成23年 医療業》

医療業における労働者派遣ビジネスは規制があるため、他業界の大企業のように実際には人材派遣会社の法人設立はできませんが、その機能性を病院内部に取り込んでいく試みは十分に可能です。病院の内部労働市場に、枠組みとなるシステム(院内各部門の人材ニーズ及び人材蓄積状況を人事部等が把握し、人事異動によって適材適所のマッチングや負担標準化を図るシステム)を整備することで実現できます。仮想設立においては、病院内が一つの労働市場(内部労働市場)のため、外部労働市場で無料職業紹介を行うハローワークと同様、内部で「求人・求職バランスシート」をつくり、各部局・職種ごとにデータベース化して、さらに担当者がコンピュータ上では記録できないアナログ情報の付加により精緻化を行うことで、効率的な内部労働市場を構築することができます。

仮想高齢人材派遣会社の院内設立イメージ

対策3.仕事の中身をシェアする

【事例】 高齢者1人で行う業務を2人体制に変更 《平成25年 地方新聞業》

紙面審査などの業務において、通常は社員1人で行う仕事量をショートタイム勤務者2人でローテーションして勤務することが可能です。また、記者職の土日勤務を、現役世代の代わりに高年齢者が担当することも大いに可能性があります。

【事例】 社内ワークシェアリングの導入 《平成28年 ブライダル業》

当社では、定年後に短日数で働きたいという従業員は、2人でペアを組む「ワークシェアリング」を選択できます(同じ業務を2人で3日と3日に分けて働く)。なお、希望する部署にシェアする相手がいない場合は、本人の希望には沿わない場合もありますが、組める相手がいる部署で働くこともあります。高齢者の中には、毎日働かずに個人の趣味などを大切にしたいという人もいます。今後は、多様な働き方を実現していくことが重要になってきます。