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特集(メールマガジン第104号)

【高】「生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム」を開催しました!

 2021(令和3)年4月から施行された改正高年齢者雇用安定法により、70歳までの就業機会の確保が努力義務となり、働く意欲のある高年齢者が活躍できる職場環境の整備が求められています。このため、本年度は「改正高年齢者雇用安定法」をテーマに、全国5カ所(岩手、東京※、岐阜、大阪、宮崎)で「生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム」を開催しました。新型コロナウイルス感染症対策を講じたうえでの開催となりましたが、会場参加およびライブ配信視聴者の総計で約880人の方々にご参加いただきました。
 ここでは、東京会場で行われたトークセッションを抜粋してご紹介します。

※東京のシンポジウムについては、高年齢者活躍企業フォーラム(高年齢者活躍企業コンテスト表彰式)の第二部として開催しました。


 当機構のYouTubeチャンネル(JEED CHANNEL)では、各シンポジウムの模様を動画配信しています。
 詳しくは下記URL をご覧ください。
 https://www.jeed.go.jp/elderly/activity/symposium.html

 

トークセッション「高年齢者の意欲・能力を活かした職場環境の実現に向けて」

 コーディネーターとして藤村博之氏(法政大学経営大学院イノベーション・マネジメント研究科教授)、パネリストとして株式会社ササキ、株式会社アールビーサポート、イオン九州株式会社にご登壇いただき、各企業の取組みや今後の高齢者雇用について、以下のテーマに基づいてトークセッションを行いました。

【定年延長や70歳までの継続雇用制度導入の工夫、その後の効果について】

・株式会社ササキ(山梨県)[ワイヤーハーネス製造・加工]
 2005年に定年年齢を65歳に引き上げ、定年後は希望者全員を70歳まで継続雇用する制度を導入しました。また、70歳以降は一定条件のもと年齢の上限なく継続雇用をしています。
 ものづくりの企業として、技能、技術と姿勢を熟練者から若い世代に伝承し、高齢になってもモチベーションを高く持ってもらいたい、そして「あなたの力が必要だ」ということを具現化・明文化しようと考え、定年延長を行いました。


・株式会社アールビーサポート(三重県)[介護サービス]
 2017年に定年年齢を66歳に引き上げ、定年後は希望者全員を70歳まで継続雇用し、その後は一定条件のもと年齢の上限なく継続雇用しています。
 雇用年齢の上限をなくした制度の導入により変わったことは、短時間勤務への変更のように、細く長く働き続けられる選択肢があることで、マンパワーを損なうことなく、サービス提供ができるようになったことです。


・イオン九州株式会社(福岡県)[各種商品小売業]
 2008年に定年年齢を65歳に引き上げ、2018年には、定年後は一定条件のもと70歳まで雇用する嘱託社員制度を導入しました。嘱託社員制度は、短時間勤務も選択できるなど、ライフスタイルに合わせて柔軟に働ける制度となっています。現在8割の従業員がこの制度を選んでおり、「勤務を続けてほしい」という会社の思いと、「ゆっくり働きたい」という従業員の働くモチベーションがうまく合致したのではないかと考えています。

 

【65歳以降も意欲を持って働き続けてもらうための工夫、期待する役割、モチベーション維持・向上に向けた取組みについて】

・株式会社ササキ
 年齢を重ねても働ける場が用意されていることを就業規則等に明文化するなど、「見える化」することが大事だと思います。
 長く働いてもらうための工夫の一つとして、マッスルスーツの導入やエイジフレンドリーの取組みなども取り入れています。


・株式会社アールビーサポート
 客観的評価にともなって給与支給額を変動させ、高齢になってもしっかりと給与がもらえる制度としています。これにより、モチベーションアップや健康を維持していこうという気持ちの向上につながっていると思います。
 また、長く働き続けてもらうために、アシストスーツや自動掃除機を導入し、福利厚生としては医療費補助制度を設けています。


・イオン九州株式会社
 「教育は最大の福祉」という考え方のもと、新人からベテランまで、すべての従業員が知識や技術を学べる仕組みを設けています。
 長く働いている従業員がお手本となり、次の世代のモチベーションにつながっていると考えています。

 

【70歳までの就業機会の確保に向けて大事な視点や考え方とは】

・株式会社ササキ
 高齢従業員が働きやすい職場環境をつくることは、経営者の役割であると考えています。また、高齢の方が働いているのが当たり前、という社風や雰囲気をつくっていくことが大切だと考えています。


・株式会社アールビーサポート
 定年年齢や継続雇用年齢を引き上げたことによって、高齢従業員のモチベーションアップにつながり、これから高年齢となるスタッフたちにとって長期にわたり勤続できるという安心感が出てきたように感じます。また、退職者が減り、人員確保につながっています。


・イオン九州株式会社
 今後、70歳雇用の取組みを進めていくなかで大切なことは、働くことを希望する高齢者の選択肢の幅を増やすこと。また、いろいろな働き方ができるということを周知することです。いくつになっても、いつでも勉強できる環境を整えることが、制度の導入と並んで必要なことだと思います。

 

【藤村教授による総括】

 みなさんのお話を聞いて、企業が必要とする能力を持っていて、本人が新しいことを学ぼうとする意欲があり、働き続けたいと前向きに取り組んでいるのであれば、何歳まででも働いてもらってかまわない、そういう姿勢や社風で取り組んでこられたのだなと感じました。
 高齢期になっても第一線で働き続けていくためにもっとも必要とされる能力というのは、技術が進歩する、使う道具が変わるなどの変化に対応する力だと思います。その変化にいかにうまく対応していくか。それは、学び続けること。自分自身がどういう役割を企業のなかで果たしていくことができるのか、常に問いながら自分から積極的に取り組んでいく。そういったことが、70歳現役・生涯現役を目ざすうえで必要なのだろうと思います。

「みなさまからのご意見・ご感想」

 各会場で実施したアンケートにより、参加者からいただいた声をご紹介します。

・地元企業のほかに大企業の先進的な取組み事例は興味深く、事前質問に答える形式も効率的でたいへん参考になりました。パネルディスカッションの内容もよかったです。
・プランナー(※)の「高齢者戦力化に向けた賃金制度と評価制度の構築」の講演および資料はたいへんわかりやすく参考になりました。

(※)当機構で企業向けの高年齢者雇用に関する相談・提案を65歳超雇用推進プランナーが行っており、今回のシンポジウムでは講演者やパネリストとしても参加しています。

 関係機関のみなさまのご協力により、各会場で無事にシンポジウムを開催することができました。この場を借りて厚くお礼申し上げます。
 2022(令和4)年度も高齢者雇用に関する有効な情報提供ができるよう、シンポジウムの開催を計画しています。詳細が決定しましたら、当機構ホームページや当メールマガジンなどでご案内します。

《お問合せ先》
 雇用推進・研究部 普及啓発課
 (TEL:043-297-9527)