労働者がセルフケアに取り組むことができるようになるための研修の実施

シダックスオフィスパートナー株式会社

安全衛生教育・すべての障害

改善前の状況

1 全体の80%の割合を占める精神障害のある社員の心の健康には、不安の蓄積を回避し、やりがいとモチベーションの維持・向上につながるキャリア形成の仕組みづくりが重要と考えられた。
2 従来行われていた集合研修では、居眠りやただ参加しているだけといった態度の社員が目立ち、研修の進め方そのものを検討する必要性があった。
3 効果的な研修を行うためには、支援員となる社員のより一層のスキルアップも求められた。

改善策

1 セルフケアに関する研修(グループワーク)の実施

キャリア推進室が中心となり年間スケジュールを決め、セルフケア以外の研修を含めた各種研修を月1回実施するように計画した(資料1:セルフケア方法構築の進め方、資料2:事前配布資料—1・2、資料3:研修・グループワーク資料—1・2)。
 なお、研修においては、社員の理解力などにより、補足が必要と感じる場合は、追加説明することなどの配慮を行っている。

資料①セルフケア方法構築の進め方(上の画像をクリックするとPDFファイルが開きます)
資料②事前配布資料-1・2(上の画像をクリックするとPDFファイルが開きます)
資料③研修・グループワーク資料-1・2(上の画像をクリックするとPDFファイルが開きます)

グループワークの様子

<セルフケアに関する研修内容の例>
・ストレスコーピング(ストレスにうまく対処すること)
・アサーション(自分と相手双方を大切にするコミュニケーションスキル)
・アンガーコントロール(怒りを上手にコントロールして適切に対処すること)
 これらの研修は、必要に応じ複数回実施。

2 アクティブラーニング(能動的な学習)の導入

グループワークを行い、グループで解決しながら実践的に身につけるようにした。
シダックスオフィスパートナー株式会社の研修において導入している。(資料④:アクティブラーニング)

資料④アクティブラーニング(上の画像をクリックするとPDFファイルが開きます)

<円滑に進めるための工夫>
・個人によって経験値や理解度によって差があるが、同じレベルでのスタッフを1つのグループにするのではなく、あえて分散させるようにする。また、理解できるまでに時間がかかる社員に対しては周りの社員がサポートをする体制をとる。
・グループワークの役割(司会、書記、タイムキーパー、発表)は一人一役とし、全員に参加意識をもってもらう。
・グループワークを始める前に参加者全員に対して、グループワークでは、相手の意見は否定しない、必ず1回は発言するなど基本ルールを説明する。

<理解度を高めるための工夫>
・テーマによっては、模範解答を予め用意しておき、最後に補足として説明をする。
・グループワークの進め方に慣れており、内容についても理解できている社員(グループリーダー・リーダー・トレーナー・グループリーダー補佐など)が、その都度必要に応じサポートをする体制をとる。特に知的障害のある社員、発達障害の傾向のある社員にとって難しく感じるテーマの場合は、グループリーダーがフォローをするようにしている。なお、効果を持続させるため、研修の翌月は実施した研修のテーマを社員の目標に設定する。
・研修後に必ずアンケートを取り、その内容によりグループリーダーが後日研修参加者に対して補足をする。

3 支援員のスキルアップ

職場の中で支援員となる社員は、研修内容以外にも、日頃から他の障害のある社員に必要事項を伝えることや、障害のある社員からの質問に答えることが重要である。伝え方によっては、相手の受け止め方も異なるため、支援員となる社員が伝え方のスキル、特にカウンセリング・コーチング・ティーチング・リフレーミング等を身につけることができるようになるための研修を行った。
 さらに、研修で習得したスキルの活用を促進するため、「サポートスキル活用事例報告書」(資料⑤)を義務化した。

資料⑤サポートスキル活用事例報告書

改善後の効果

1 セルフケア研修の実施

・自らセルフケアに取り組むことで、適応的思考(より現実的でバランスの取れた考え方)を取り入れる社員が多くなり、メンタルヘルス不調者も減少傾向になった。
・社員同士の関係が円滑になり、時々発生していた社員同士の〝いざこざ"がほぼ無くなった。他者のことを理解していくことで、自身のこころの健康増進にもつながっている。
・グループリーダーが年間の研修スケジュールを立てていくようにしているが、職場の中で社員が身につけた方がよいことを挙げながらスケジュールを考えることで、自身だけではなく、社員の心の健康も考えていくといった経験を積むことができるようになった。

2 アクティブラーニングの導入

・日頃交流のない社員と幅広くコミュニケーションをとることで、皆で協力し合いながら意見をまとめる力を身につけることができるようになった。
・他者との相互理解が進み、対人関係がより円滑になることで、メンタルヘルス不調のある社員のメンタル面の課題も軽減され、健康増進につながった。
・参加者の真剣さが増し、より多くの学びを生み出すことで、自身の課題の理解と次の目標を見つけることができるようになった。
・知的障害のある社員は、精神障害のある社員を手本として意見交換ができるようになるなど著しい成長が見られた。
・研修における自身の発表や意見交換を楽しみにしている社員も増えてきた。

3 支援員のスキルアップ

・支援員のスキルアップにより、社員にとって以下のような効果が表れている。
1.セルフケアが理解でき悩んだ時の改善のための選択肢が多くなった。
2.複数の人との会話が苦手な社員が自分の意見を言えるようになった。
3.自分自身の強み・弱みを理解できるようになり、目標設定が明確になってきた。
4.目標を持つことにより自身のキャリアアップが現実化してきた。(正社員登用等)
5.経験豊富な社員の意見や体験を知る機会ができ問題解決の幅が広がった。
6.会社や同僚との相互理解が進み対人関係がより円滑になった。
7.働き続ける力を身につけるための基礎知識やヒューマンスキル等、向上の必要性を感じ自分に合ったキャリア形成に関心が高まっている。
以上の取組の結果、社員は「やりがい」を感じ、支援員による「モチベーションの維持・向上」に焦点を当てた取組は、職場定着率を向上させている。

社員の声

吉田 稔さん

「以前は職場の中でコミュニケーションをとることが少なかったのですが、グループワークを通じて他の人とコミュニケーションを取ることができるようになり、発信力も身についてきました。また、『適応的思考を身につける』の内容では、自身の考え方の癖を知り、よりよい人間関係を作る上で、また物事の考え方において役に立ちました。これらは、スムーズな判断やスタッフ同士で仕事を決めるなど日頃の業務にも役立っています。今後は自分の経験したことを活かし、ピアサポーター的なことをして他の方や会社のために役に立ちたいと思っています。」

宮本 夏美さん

「初めての就職であったので、いろいろなことを一から覚えていくことにプレッシャーや不安がありました。最初は、緊張すると言葉が出ず、例えば自分の仕事が終わったら、隣の人に『手伝うことはありますか?』ということを聞きたくても声が出せないことがありました。しかし、グループワークを通じて少しずつ変わっていき、今では皆と相談しながらチームで仕事を進めることができるようになりました。」

Tさん

「グループワークでは、参加者それぞれに、司会、書記、タイムキーパー、発表という4つの役割が与えられています。これらの役割は社会生活においても大事だと思います。グループワークの中では、自分の意見を言っていいものかと悩み、自分の気持ちを肯定できずにいましたが、人それぞれ気持ちや意見は違うということを受け入れられるようになりました。言葉にすることの大切さを感じています。
年齢的なこともあり、働くことはできないと思っていましたが、この会社に入社し働く機会が与えられたことはとても良かったと思っています。相手の話をくみ取ることなど苦手なところはありますが、今後も自分の気持ちを周りの人に伝えることができるようになりたいと考えています。」