日頃の目配りと避難体制の見直しによる避難時の安全確保の取組

オムロン太陽株式会社

救急・避難対応、肢体不自由

改善前の状況

①避難訓練では、これまで、地上9mの事業所建屋の屋上を避難場所としてきたが、東日本大震災時に想定以上の大津波が発生したことから、既存の避難場所や避難方法が適正かを見直す必要があった。
②障害のある社員が全体の約50%を占めており、全員がスムーズに避難するために、職場環境をはじめ、避難時の指揮命令系統や役割分担を予め十分に検討しておく必要があった。
③事業所内の車いす使用の社員は、事業所内に20名弱配置されていた。これらの社員の避難時には、避難支援担当者の一人が車いすを後ろから押し、もう一人が車いすの前輪付近に紐を括り付けてけん引する等により移動支援を行っていたが、体力面や安全面から避難支援担当者に負担がかかる場合があった。

紐を使用してけん引する様子

紐を使用してけん引する様子

改善策

1 避難場所の見直し 

 事業所建屋の周辺は平地であり、避難時には高い建造物に多くの人が集中することは確実だった。事業所建屋付近への津波到達が見込まれる約30分間で、多くの社員が避難できる場所を検討し、約1㎞離れた標高547m地点の神社を避難場所に決定した。

2 日頃の目配り

 日頃から事業所内で車いすの社員がスムーズに移動できるため動線を確保している。通路の幅は車いす2台がすれ違えるように1.2m程度(最低0.9m以上)確保し、車いすのタイヤをパンクさせないように部品を通路内に落下させない、物品を仮置きもしないように月1度の5Sパトロール活動で徹底している。

作業場周辺の通路幅は120㎝以上、作業場内は90㎝以上を確保

作業場周辺の通路幅は120㎝以上、作業場内は90㎝以上を確保

3 避難体制の見直し

 自衛消防隊にて7班に役割分担を行い、それぞれに班長・副班長等を決めて役割を事前に確認した。車いす使用の社員の避難時には精神障害のある社員などが障害のない社員と交替で押す場合があるが、体力のある社員または2人体制で車いすを押すようにして負担軽減を図っている。
 また、混乱なく避難できるように、「津波発生の有無」「火災発生の有無」等の避難場面をいくつか想定し、避難行動のフロー図を作成した。

避難時の社内体制図

避難行動のフロー図(津波発生時)

4 補助装置の導入による避難支援担当者の負担軽減

車いす使用の社員の避難支援担当者の負担を軽減するため、車いすに装着してけん引する補助装置(以下「けん引式車いす補助装置」という。)を使用することとした。このけん引式車いす補助装置は、避難時に使用するレインコート、予備用マスク、懐中電灯等の物品と一緒に、総務部門事務所内にあるロッカーに保管しており、緊急時にすぐに使用できる状態にしている。なお、事業所建屋から避難場所(神社)まで避難経路は全て舗装されている道路を選定し、車いすが安全に通行できるよう配慮した。


けん引式車いす補助装置の保管場所

5 避難訓練の実施

上記1~4の改善策を実際の災害時に活かせるよう、年2回避難訓練を実施している。
うち1回は、近隣に所在する社会福祉法人太陽の家と合同で実施している。
(注)太陽の家との合同の訓練の際は太陽の家の建屋に避難。当社単独の訓練の際にはけん引式車いす補助装置を使用して神社への避難を年1回実施。


けん引式車いす補助装置を使用した避難訓練の様子

改善後の効果

①想定される津波の高さ以上の高さにある神社を避難場所に決定したことで、社員の命を守れる可能性が高まった。
②日頃から事業所内の動線確保を行うとともに、緊急時の役割分担や行動フローを整えたことで、効率的に避難できるようになった。
③けん引式車いす補助装置を使用することで、避難支援担当者の負担軽減や安全確保につながった。また、車いす使用の社員と避難支援担当者の双方が快適に移動できるようになった。
④大震災を想定した避難訓練を繰り返し行い、津波到達が見込まれる30分以内を目標に、直近では30分27秒で避難を完了している。