A 社内にある職務内容やそれらの職務に求められるスキルなどについて詳細に確認し、職務内容を創出していくとよいでしょ う。また、職務内容の創出にあたっては、新たな視点(「切り出し・再構成モデル」「積み上げモデル」「特化モデル」を組み合わせる)を取り入れる方法もあります。
⇒参照:[参考]職務内容の創出方法(「切り出し・再構成モデル」「積み上げモデル」「特化モデル」を組み合わせる)
企業からは「どのような仕事をしてもらったらいいかわからない」、「専門的な知識が必要な仕事が多いが大丈夫だろうか」という声が多く聞かれます。
障害特性により対応できない職種や職務内容はありますが、障害者それぞれには、専門知識・技能等を持ちそれを活かせる、専門知識等はなくても特定の分野であれば力を発揮できるなど、働くことにおいてはさまざまな可能性があり、また、本人の努力や企業等からの配慮・サポート(支援)によってさらに技能が向上したり、従事できる職務内容の幅が広がる可能性もあります。
そのため、採用を予定する職務内容は、障害の種類や程度を限定することを前提に考えるのではなく、専門知識等が必要ではない職務も含めて、障害者の持っている力(強み)を活かせる職務、企業にも貢献できる職務を新たに創出して選定するなど、柔軟に考えることが大事です。
各々の障害特性を考慮することは重要ですが、職場環境の改善や就労支援機器の導入、適切な教育訓練により、さまざまな職種に従事する障害者、職域を広げている障害者も数多くいます。
障害者が従事する職務内容は、具体的には採用が決定した障害者の障害特性や本人の希望などを踏まえて確定することになります。その際には、以下の「職務内容の創出の方法」に従って検討するとよいでしょう。
なお、職務内容の検討については、ハローワークや地域障害者職業センターなどの支援機関の助言を受けるとよいでしょう。
[参考]職務内容の創出の方法(社内の職務を詳細に確認し選定する)
まず、社内の仕事の内容や要求されるスキルなどを、社内の各部署や各作業担当者へのヒアリングなどを通じて細かく確認してみましょう。確認にあたっては、下の<職務選定のための整理表>を活用してみるのもよいでしょう。
なお、清掃、ランドリー、社員食堂の運営など、外部委託している業務を含めて見直しを行い、職務内容の選定の検討に加えることも一考です。
1 業種 医療機器の製造業
2 雇用場所 製品の生産工場
3 社員数 190人
4 障害者の雇用状況と経緯
法定雇用障害者数は4人。経理部に内部障害者を1人雇用しているが、あと3人の障害者を工場で新規雇用することを目指している。事務部門では身体障害者の雇用を想定して募集活動を始めたが、適当な人材が確保できなかった。ハローワークの助言で、採用を予定する障害者の範囲を限定せず、製造現場での雇用を目指すこととし、職務を再確認した。
5 整理表の作成
作業名 | 作業内容 (工程等) |
要件1 (身体負担) |
要件2 (理解・判断) |
要件3 (コミュニケーション) |
要件4 (資格・スキル) |
時間 頻度 |
施設 設備 |
適否 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
部品の検品 | 部品形状やキズの 確認 |
普通 | 必要 | 必要 | 不要 | 終日 | 否 | |
部品収納・ ピッキング |
数字・アルファベット を判読し、収納ピッキ ングを行う |
負担 やや大 |
必要 | 必要 | 不要 | 終日 | 否 | |
配送用の 段ボール準備 |
配送製品に合わせて 段ボールを組立 |
負担 やや大 |
不要 | 不要 | 不要 | 随時 | 適 | |
部品の組立 | 5種類の製品の組立 | 立ち 作業 |
必要 | 必要 | 不要 | 終日 | 工具 使用 |
否 |
輸入製品の開梱・ ラベル貼り・ 箱詰め |
100単位の製品を 10個単位に詰め 直す |
負担 やや大 |
不要 | 不要 | 不要 | 終日 | 適 | |
指示書作成の 数値入力 |
エクセル帳簿に商品 №・個数・日付を 入力 |
負担小 | 必要 | 必要 | パソコン 操作 |
随時 | 否 | |
段ボール解体・ 整理 |
梱包用発泡スチロー ルと分別し、整理 |
負担 やや大 |
不要 | 不要 | 不要 | 随時 | 適 |
6 採用を予定する職務の選定
①判断要素が少ないこと、②納期に縛られないこと、③作業内容の変化が少なく恒常的に作業量を確保できることなどをポイントにして、「輸入製品の梱包・ラベル貼り・箱詰め作業」を選定し、募集できるようにした。
なお、専門技能が必要な事務部門の職務についても、引き続き募集を行うこととしている。
応募がない場合は、事務部門において専門技能が必要ではない仕事を含めた職務の整理を詳細に行い、募集を検討することとする。
[参考]職務内容の創出の方法(「切り出し・再構成モデル」「積み上げモデル」「特化モデル」を組み合わせる)
(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構 平成29年3月発行 調査研究報告書No.133
「精神障害者及び発達障害者の雇用における職務創出支援に関する研究」より
障害者の担当職務を創出する方法として、知的障害者の雇用を契機に考えられた「切り出し・再構成モデル」というものがあります。このモデルは、知的障害者以外の障害者にも幅広く有効なものですが、障害者が従事する職務を限定的なものにせず、能力等に応じてさまざまな職務に従事できるようにするためには、さらなる視点を加えていくことが必要です。そこで、障害者の持つ多様性等をさらに考慮した「積み上げモデル」「特化モデル」という職務を創出する方法もとられるようになっています。
なお、これらの3つのモデルは独立したものではなく、この3つのモデルを必要に応じて選択し、組み合わせて活用することにより、障害者のさらなる能力発揮、キャリア形成を促していくことが期待できます。
その職場に存在する定型反復的な作業を探し出した上で、これを切り出し、再構成することにより、障害者の職務を創出する方法です。
この方法では、障害者の職務の創出以外に、例えば介護現場であれば、介護職が行っている仕事のうち、清掃作業を障害者の職務とすることにより、本来取り組むべき介護の仕事に専念できるようになるといった効果もあります。
能力の向上に必要な時間を考慮して、一定の時間をかけて次第に職務の内容や責任の幅を広げるなどにより、十分に能力を発揮していくことができるようになることを重視します。
雇用開始時点では、既存の職務の中から作業を切り出し、再構成された限定的な職務を担当しますが、目標として設定する職務に向けて、作業等を積み上げていく職務の創出方法です。
個々の障害者によって異なる得意分野に着目し、その方の能力や経験の強みをいかす既存の職務や再構成された新たな職務を選び出し、その職務における一部の不得手な作業等を担当の見直しや支援の対象とすることで、障害者が得意とする分野に専念・特化できるようにする職務の創出方法です。
障害者雇用事例リファレンスサービスの事例から