A 改善すべき問題が起きたときは、問題となる行動と障害のある社員が置かれている環境の情報を集めて原因を考えることが、改善につながる第一歩です。
職場で起こる問題は個別性が高く、一律の改善策はありません。それは問題の内容が同じでも本人の特徴や本人が置かれている環境、問題となる行動の原因が異なるからです。改善すべき問題が起きたときの対応として最も大事なことは、「問題となる行動と本人が置かれている環境の情報を集めて原因を考えること」です。その上で原因に対応した改善策を考えることがポイントとなります。
以上の取組は、本人の望ましい行動の継続や今後の目標の設定にもつながります。
なお、問題が起きた時の対処については、支援機関からの助言を受けるとよいでしょう(本人を支援している支援機関がある場合は、本人の同意を得た上で、本人への対処に関する情報を収集することも含む)。
改善策を考える場合は、本人と一緒に考える方法もあります。
改善策を実施する場合は、一方的な指示にならないように本人に理由を説明し同意を得ることが大事です。
(例1)パソコン入力作業で、その都度指示を受けて作業するが、ミスが多発している
→”ミスしないで”と注意するだけではなく・・・
1 原因の例
(本人)指示が理解できていない。手順や注意すべき点がわからない。自分では正しく作業していると思っている。作業量が多く処理できない。複数の指示があると混乱する。集中が続かない。
(企業の担当者)本人は作業を行うリズムができていないのではないか。本人はわからないときに質問できていない。指示命令系統が統一されていない。説明の話が長いかもしれない。
(環境)雑音が多く本人にとって環境がよくないかもしれない。
2 企業の担当者による改善策の例(さまざまな改善策を組み合わせる)
・本人にとって分かりやすい作業手順書を作成する(大事なところやミスしやすいところに印をつけて確認すべき点を明確にす
る)。
・本人が見直す習慣を身につけるため、チェック表を作成する。
・指示する企業の担当者を統一し、指示や説明のポイントを強調して伝える。
・自分から質問できるように最初の問いかけ方法(質問するときの最初の言葉や合図)を決める。
・上司等と確認のうえ、スモールステップの目標(時間、量)を定めて本人に伝える。
・耳栓をつけてもらうなど集中できる環境を作る。
・長時間の継続作業に負担がないかどうかを確認しつつ、本人が定期的な水分補給、肩回し、深呼吸などを取り入れ、リフレッ
シュしながら作業を行うリズムを作ることができるように助言する。
(例2)部品の組立作業中、感情的になって部品を床に投げる
→”物を投げないで”と注意するだけではなく・・・
1 原因の例
(本人)作業手順がわからない、または想定していなかったトラブルが起きてイライラした。いつもより遅くて焦りが生じてい
た。不規則な生活で寝不足による疲れがあった。嫌なことを思い出した。
(企業の担当者)ミスを起こしたときやうまくいかないときにイライラしているようだ。
(環境)周囲で急に大きな音がしたことが原因かも。
2 企業の担当者による改善策の例(さまざまな改善策を組み合わせる)
・作業の手順を確認し、見本を示しながら正しい手順を説明する。
・ミスしやすい箇所を写真などで示し、大事なところをポインティングする。
・企業の損失になるので部品を投げてはいけないことを本人に説明し、今後本人が気をつける項目(目標)にする。
・本人がイライラが高まったときの自分に合った対処法(他の社員に伝える、テニスボールを握って力を他に分散する、外の空気を吸うなどクールダウンを行う)について助言する。
・プライベートなことに原因があったり、生活習慣などの改善が必要であれば、家族や生活面の支援機関と相談し協力を依頼する。