4.職場定着のための取組(3)人材育成

Q 障害者に対する人材育成等の視点を踏まえた支援について必要なことは何ですか?

A 障害者の希望や特徴に合った育成やキャリア形成のための支援を行うことが必要です。

企業の経営目標の実現や成長には従業員の人材育成が必要不可欠であり、障害のある従業員についても同じです。障害者にとっても企業から期待され、貢献することでキャリアアップや昇進等を実現していくことは、働きがいや成長につながります。また、障害者の自律的な成長を促すためにはキャリア形成への支援も望まれます。

基本的な考え方と方法

人材育成の制度や方法(研修制度、人事評価制度、資格取得推奨制度等)は企業によって様々ですが、障害者の場合にも他の社員と同様に対応することが基本です。そして、可能な範囲で障害特性等に応じた配慮を講じ、研修機会をつくることが大事です。
障害の有無に関わらず個々の社員の価値観や希望、置かれた状況は様々であり、また、職業人としての将来像やキャリアをどう考えるかも様々です。人材育成やキャリア形成支援については、社員の希望や状況に応じたものであることが必要であり、社員が制度や将来像について理解した上で主体的に取り組めるようにすることが必要です。
そのためには、経営目標や制度等について分かりやすく説明することが重要です。また、これらのことは、先の見通しを持ってもらうため、定期的な面談によるふり返りの中で、随時確認するような配慮も望まれます。

障害者に対する社内での研修

OJT型(仕事を通じて上司等から教育訓練を受ける)

OJTは通常業務の中で体験しながら行われることから育成効果が期待できますが、分かりやすい指示と理解状況の確認、本人への結果のフィードバックが基本です。知的障害、精神障害、発達障害などのある方については、視覚的に分かりやすい資料の準備、指示者による実演と説明、本人による実行、指示者による評価と励まし等が有効です。

OFF-JT型(実務を離れた集合研修等で教育訓練を受ける)

次のような配慮が望まれます。

  1. 車いす使用者に対する段差解消等の物理的環境の整備
  2. 聴覚障害者への手話やノートテイク等の情報保障 ノートテイクとは、担当者が隣に座り、講師の話している内容やその場で起こっていることを、手書きまたはパソコンで文字通訳するものです。ノートテイクしたものをプロジェクターやモニターに投影することも可能です。
  3. 知的障害者向けに平明な表現やイラストを使った教材準備
  4. 発達障害に配慮し長時間の講義や騒がしい環境を避ける等の配慮

人事評価と育成

企業として従業員への期待を目標として設定し、評価し、結果を本人にフィードバックして成長につなげることはキャリア形成に不可欠です。
一方で、障害者の場合には一般的な目標設定は困難な場合があります。そうした際には、目標や達成水準を本人に応じたものにすることが重要です。例えば、知的障害者の場合では、具体的で細かい目標、例えば「作業ミスを減らす」あるいは「定時に出社する」といったものとし、評価の頻度も四半期毎に行うことで評価やフィードバックがしやすくなります。
また、評価の際には目標の意味を明確に伝え、達成に向けた意識や行動につなげるとともに、評価結果を次の成長につなげることが重要であり、そのためには評価者(企業)と対象者とのコミュニケーションも不可欠です。そして、評価結果が雇用継続や担当職務の拡大、昇給・昇進のように、実感できるものにつなげることも重要です。

能力開発

職業能力開発校(職業訓練校)には、在職者を対象としたスキルアップのためのセミナー・講習会を行っているところがあります。そうした場では特定のスキル(例えば表計算ソフトやCAD等)に絞って短期の講習を行っています。そして、障害に応じた環境(設備・機器・ソフト等)と指導技法が整っていることから、社内でのスキルアップを補完するものとして有効な選択肢と考えられます。

障害者職業能力開発校

国立13校、都道府県立6校の計19校が設置されており、障害の態様に配慮した職業訓練を実施しています。
国立の障害者職業能力開発校のうち、以下の2校は(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構が運営しています。

  • 国立職業リハビリテーションセンター(中央障害者職業能力開発校) 
  • 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター(吉備高原障害者職業能力開発校)

雇用形態とキャリアの多様性・柔軟性

障害者の雇用形態は正社員以外の雇用形態が7割弱となっています(平成30年度障害者雇用実態調査より)。しかし、正社員での就労を希望する障害者も少なくありません。また、企業においても正社員への登用制度を設けているところもあります。
登用制度が設けられ、実際に登用された者がいることは、障害者が自身のキャリアの可能性を理解し、意欲をもって自律的に取り組んでいくことにつながります。雇用形態だけでなく、担当職務の拡大や職位の向上等もキャリア上の重要ポイントであり、そうした点が従業員に明示されていることは意欲等につながります。
他方で、障害者の中には障害状況や家庭の事情等により、勤務時間の短縮や担当業務の変更などが必要となる場合もあります。そうした際に柔軟な対応をとれるようにしておくことにも考慮すべきと思われます。
雇用形態の種類や勤務条件等は企業によって異なると思われますが、障害の状況等に応じた働き方が可能となるような方策、例えば、正社員から短時間勤務者への異動、職種の限定等の配慮(選択肢)が設定され、障害者に提示されることは、安心して働き続けることや積極的なキャリア形成につながります。
また、近年では、企業によっては正社員のなかでも多様で柔軟な働き方(短時間勤務、地域限定勤務等)を可能とするところもあり、障害者に限らず従業員の長期雇用等につながるものと考えられます。
そして、そうした多様な制度や工夫について明文化し、趣旨や運用面も含め社内に周知していくことも望ましいと思われます。障害者を特別扱いするのではなく、企業の合理的配慮として行われるものであり、必要な従業員には公平に適用されるようにすることで、すべての従業員が働きやすい職場の実現につながることでもあります。