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5.障害特性と配慮事項 (4)内部障害

1 内部障害とは

 心臓、腎臓、呼吸器(肺等)、ぼうこう、直腸、小腸、免疫細胞、肝臓といった内臓器官は、血液循環、血液浄化、呼吸、排泄、消化、免疫、代謝・解毒等の重要な機能をもっています。疾患等によりこれらの臓器が障害を受けると、体力や持久力等の低下や疲労等の全身症状が起こります。
 人工臓器や移植、治療法の進歩によって、障害がありながら長期に生活する人が増えています。

2 障害特性

○心臓機能障害
  • 全身に血液によって酸素や栄養を循環させる機能が低下することにより、身体作業や立ち作業の能力が低下します。
  • 心臓ペースメーカーや人工の心臓弁によって機能を補い、普通の職業生活を送ることができる人が増えています。
  • ペースメーカー使用者については、誤作動を防ぐため、高エネルギーの電磁波を発生する家庭電気製品、医療用機器、工業用機器の使用には注意が必要です。
○腎臓機能障害
  • 食事や肉体労働に伴って増加する血液中の老廃物を取り除く機能や、血液の濃度や成分を調整する機能が低下することにより、疲労が蓄積しやすくなります。
  • 汗で水分や電解質を失う温熱環境や風邪につながるような寒冷環境を避け、温暖な労働環境が望まれます。
  • 腎臓機能が全廃しても、血液透析等により機能を補うことができるようになっています。
○呼吸器機能障害
  • 肺から酸素を取り込む機能が低下することで、多くの酸素を必要とする身体運動が困難となります。
  • ガス交換機能が障害されている場合は携帯型の酸素ボンベによって補うことができ、通勤等も可能となりますが、その障害の程度により通勤ラッシュを避ける必要があります。
  • また、呼吸筋の麻痺により自発呼吸が困難な場合には人工呼吸器付き車いすによって社会復帰する例もあります。環境としては刺激ガスや温度(特に冷気)、乾燥に留意します。酸素療法を行っている場合は火気や室内の換気にも留意します。
○ぼうこう・直腸機能障害
  • ぼうこうや大腸の疾患により、尿や便を排泄前に蓄積しておく機能が失われた場合も、体の外部の袋に蓄積できるように尿路変更や人工肛門(ストマ)をつけ、通常の生活が送れるようになっています。
  • 人工肛門の使用者では、満員電車を避ける等の勤務時間の調整が必要となることもあります。
○小腸機能障害
  • 食物中の栄養を吸収する機能が低下するため、生活のためのエネルギーや全般的な体力が低下します。
  • 軽度の場合は、夜間に液体栄養を胃にチューブで時間をかけて流し込む経管栄養となりますが、熱環境の職場、肉体労働主体の職場などでは発汗量も多いことから、電解質バランスの異常や脱水状態をきたしやすくなるので、避けたほうがよいでしょう。
  • 重度の場合は、点滴で血液に直接栄養を送り込む必要があり、近年では在宅用や携帯型の機器が使われるようになっています。
○HIV(HIV: Human Immunodeficiency Virus)による免疫機能障害
  • 現在では、服薬を継続することでHIVの増殖を抑え、免疫機能も回復するようになり、職業生活が可能な人が多くなっています。
  • 未だにHIVやAIDSへの誤解や偏見が残っているため、病気を隠して働いている人も多く、その場合、本人の不安やストレスが大きくなりがちであることから、上司や同僚との人間関係の面や、本人の心理的な面でのサポートが重要です。
○肝臓機能障害
  • 食物中の栄養を分解・加工して自分の体のために使う機能や、アルコールや毒素を解毒する等の機能が低下すると、疲労が回復しにくくなる等の全身的な影響が現れます。
  • 肝臓移植後、肝臓機能は正常になり社会復帰が可能となりますが、免疫抑制剤を継続服用することが必要であり、障害認定は維持されます。肝臓移植の前後の数年間は特に通院や医療的管理が重要であり、入院が必要な時期もあります。移植後1年もすれば普通に生活ができるので、休職時の就業継続への支援が重要です。

3 職業上の配慮

  • 内部障害でも、体力的に無理なくできる仕事は多くあります。全身の持久力や、疲労の回復に問題のある人の場合、デスクワーク、あるいは軽作業以上なら短時間就労等、無理のない仕事を選ぶようにします。体力への負担を軽減するための車いすを使用する例も一部あります。
  • 多くの場合、特に体調に問題がない場合でも月1回程度の通院による検査等が必要です。また、体調が悪くなった時は早めに受診できるような職場の配慮が必要です。
  • 体力低下や通院の都合に合わせて、仕事内容をうまくマッチングさせることができれば、実際の職務遂行場面での大きな問題はほとんどありません。
  • 不合理な職域制限や差別的な処遇にならないように、本人の意見をよく聴くとともに、主治医や産業医等の専門的意見を踏まえ、無理のない仕事への就職や配置を支援します。
  • 通勤の負担についても、体力等に合わせ、交通機関や自家用車の利用、階段、エスカレーター、エレベーターの状況等を考慮します。
  • 身体障害者手帳の等級が3~4級で身体機能が完全に失われていない場合、それ以上障害が進行しないように、また、日ごろの健康管理が重要な人たちには仕事で無理をして体調を悪化させないように、本人の自己管理と併せて職場の理解が重要です。
  • 体力の低下や疲労は外見からは分かりにくく、誤解によるいじめ等の原因になるため、就職後の継続的なサポートが必要な例もあります。
  • 先天性の疾患で長期の療養生活を経験してきた人の場合には、病気の治療で青年期まで精いっぱいであった人も多く、そのような人には、キャリア相談、職業体験、職業訓練によって職業的な可能性を効果的に広げられる例があります。

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  1. (内部障害者のための障害者雇用職場改善に関する好事例集(平成18年度))

4 資料

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