5.障害特性と配慮事項 (10)難病

1.難病とは

  • 医学の進歩にかかわらず完治が困難な「難病」と呼ばれる病気は多くあり、誰もが発症する可能性があります。そのような病気の患者を救うため、我が国では難病対策が実施され、国が研究班を作って診断・治療の医学研究を行うとともに、長期の高額医療費の自己負担の軽減と、病気の治療をしながらの就労を含む社会参加の支援を総合的に実施しています。
  • 令和2年4月現在、医療費助成の対象となる「指定難病」は333疾病で、その患者数は約95万人となっています。また、障害者総合支援法では、指定難病よりも広く筋ジストロフィーや関節リウマチ等を含み361疾病を「難病等」としてサービスの対象としています。

2.障害特性

「難病による障害」の特徴
  • 多くの難病に共通する主な症状として「全身的な体調の崩れやすさ」があり、全身的な疲労や倦怠感、痛み、発熱、集中力の低下等、最初は外見からは分かりにくい症状として表れます。また、治療に伴い、顔がむくむ、免疫力が低下する、全身倦怠感が生じるなどの副作用が現れることがあります。定期的な検査や治療の継続、日々の体調管理により、ほぼ症状のない状態を維持できる場合も多いですが、日によって症状や体調に変動が生じる場合や常に何らかの症状が出ている場合もあります。
  • その他、難病には様々な症状があり、症状の経過や疾病の進行に伴って、障害が残る場合もあります。難病は様々な身体障害や精神的障害の原因疾患であり、難病のある人の約3分の1は身体障害者手帳を取得し、障害者雇用率制度の対象となっています。難病を原因疾患とした身体障害等は多種多様となっており、認定されている身体障害等以外に多様な合併障害があり、また慢性疾患としての特性への留意が必要です。

3.職業上の配慮

難病のある人が働くこと

「難病」と一言で言っても、就業率の低い重度疾患、障害者雇用での就業が多い中程度の重症度の疾患、障害認定がなく比較的就業率が高い軽症の疾患にまで、幅広い支援ニーズがあります。疾病管理や危険防止のため、就労にドクターストップがかかる場合もありますが、「難病だから働かせられない」と一方的に決めつけるのではなく、主治医や産業医等から十分に意見を聞いて、病状や仕事の内容等から個別的に判断する必要があります。
ただし、多くの難病は未だ最新治療によっても完治させることが困難であるため、安定した就業継続や難病の症状の悪化の防止、早期対応等のためには、治療と仕事の両立支援への職場の理解と協力が不可欠です。
そのため、「難病等による障害」は障害者手帳の有無にかかわらず、すべての事業主の障害者差別禁止と合理的配慮提供義務の対象です。

難病のある人の就労困難性や就労支援ニーズの特徴

  • 難病等による障害の最大の特徴は、治療により症状は抑えられているものの、病気が完治していないことによる、全身的疲れやすさ等の体調変動のしやすさそのものです。良くも悪くも障害が固定しておらず、医学的な重症度は同程度でも、症状が少なく仕事もできる場合もあれば、体調が悪化して退職になる場合もあり、それは仕事内容や勤務条件による場合が多いです。
  • 現在、疾病により異なりますが、約3割の患者は無理なく働ける仕事に就き仕事を継続できています。一方、7割の患者は就職はできても、無理な仕事であったり職場の理解がなく定期的通院が困難である等の理由で、就業継続が困難となっており、この状況の改善が課題となっています。したがって、障害者手帳の有無にかかわらず、難病のある人の就労困難性や就労支援ニーズの中心的な特徴としては、次のようなことがあります。
  1. 「通院や休養を確保できる勤務条件で活躍できる仕事に就職すること」
  2. 「外見からは分かりにくい症状についての職場の理解や体調変動等に対応できる業務調整等の配慮を確保すること」

難病の人はどのような仕事で働いているか

  • 疾病や重症度により大きく異なりますが、一般的に、難病のある人に向いている仕事の条件には、身体的に無理がない、休憩が比較的自由に取りやすい、疲労回復が十分にできる勤務時間や休日、通院のための業務調整が可能ということがあります。このため、多くの疾病では、デスクワークの事務職や比較的柔軟に休憩がとりやすい専門・技術職で働いている人が多くなっています。疲労の解消や通院時間の確保等という点で短時間勤務が選択肢となる疾病もありますが、正社員、フルタイム、短時間勤務で働いている人の割合は同じ性別・年齢の人と差がない疾病がほとんどです。
  • 「難病のある人に適さない仕事」といった固定的な見方は適切ではなく、あくまでも個々の仕事による疲労の蓄積とその回復に必要な休憩・休日・通院等のバランスが重要であり、このことにより仕事に従事できる可能性が増してきます。

差別禁止と合理的配慮

「難病患者」の先入観を持つことではなく、一人の職場の仲間として本人を理解し、その上で、外見からは分かりにくいことが多い難病の特性や必要な配慮について本人とよくコミュニケーションをとって、理解し合って本人と職場が一緒に取り組むことが大切です。

1.採用選考時のポイント
  • 求職者本人が求人の仕事に適しているかに焦点を置き、ハローワークや本人から就職後に必要な配慮について説明があった際に、その具体的内容を理解するために十分な時間をとります。
  • 実際に必要な配慮は、月1回程度の通院への配慮であったり、体調管理のための業務調整の相談であったりするので、「難病」への先入観でなく、求人の仕事が可能か、配慮が可能かを具体的に検討します。
2.就職後の配慮のポイント
  • 難病のある人が無理なく仕事で活躍し続けるためには、仕事による疲労やストレスの蓄積と休日・休憩・通院等による体調の回復のバランスが重要です。
  • 難病のある人の体調悪化や疲労の兆候は外見から分かりにくいため、本人が差別等の懸念なく必要な配慮について職場に相談しやすい職場風土づくりを基礎として、本人が仕事で成果を上げやすいように職場全体で休暇や業務の調整が行えること、日常的に体調を気づかうことがポイントです。
3.離職防止のための配慮のポイント
  • 中高年以降での病状や障害の進行がある場合、主治医から就業可能性や留意事項を確認するとともに、本人がより能力を発揮しやすいように業務ミーティング等で業務調整や職場での協力体制を構築し人材の維持に取り組みます。
  • 一時的に病状が悪化する等で不定期の通院が増加するような状況には、通院等への出退勤時刻や休憩等の職場調整で乗り切れるように支えることで、体調を回復し職場復帰を支えます。
  • 病気により、仕事中の集中力や活力の低下が目立つ場合には、主治医から病状を確認し、例えば、勤務中の休憩を早めにとれるようにしたり、体調悪化時の通院を確保することで、より仕事への集中が可能になったりします。

4.資料

身体障害、難病のある方などの雇用促進・職場定着に取り組んだ職場改善好事例集(平成29年度)の表紙画像
難病のある人の雇用管理マニュアルの表紙画像