5.障害特性と配慮事項 (11)若年性認知症

1.若年性認知症とは

認知症は“物忘れ”という症状を起こす病気の総称であり、年齢を重ねるとともに発症しやすくなり、一般的には高齢者に多い病気です。しかし、年齢が若くても認知症になることがあり、65歳未満で発症した場合には「若年性認知症」とされます。
高齢であっても若年であっても、病気としては同じで、医学的には大きな違いはありませんが、「若年性認知症」として区別するのは、この世代が働き盛りであり、家庭や社会で重要な役割を担っているので病気によって支障が出ると、本人や家族だけでなく、社会的な影響が大きいためです。本人や配偶者が現役世代であり、認知症になると仕事に支障が生じ、結果的に失職して、経済的に困難な状況に陥ることになります。また、子供が成人していない場合には、親の病気が子どもに与える心理的影響が大きく、教育、就職、結婚などの人生設計が変わることにもなりかねません。
(小長谷陽子「令和2年版障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト」より)

2017年から2019年に実施した若年性認知症の調査結果

  • 全国で3.57万人と推計されました。
  • 最初に気づいた症状
  1. 「物忘れ」(66.6%)、「職場や家事などでのミス」(38.8%)
  • 若年性認知症の原因となる疾患

1.アルツハイマー型認知症:52.6%
脳の神経細胞が徐々に減って、正常に働かなくなる病気。

2.血管性認知症:17.1%
脳卒中(脳梗塞や脳出血)などに引き続いておこる。身体症状がみられることが多く、感情や意欲が乏しくなる。

3.前頭側頭型認知症(ピック病):9.4%
脳の前方部分(前頭葉や側頭葉)が縮むことによりおこり、同じ動作を繰り返す、自制力の低下、情緒や人格面の障害が特徴。

4.レビー小体認知症/パーキンソン病による認知症:4.1%
脳の神経細胞の中に「レビー小体」ができ、ふるえや動作が遅くなるなどパーキンソン症状、幻視、妄想、立ちくらみなどが特徴。

5.その他:頭部外傷による認知症、アルコール関連障害による認知症などがある。

(2020年7月プレスリリース「日本医療研究開発機構 認知症研究開発事業による研究結果」より)

2.障害特性

  • 若年性認知症は、在職中に発症することが多く、職場内で仕事のパフォーマンスの課題等が徐々に拡大していくために、抑うつ症状が出現し、最初は「うつ病」と診断されることもあります。
  • 年齢に比して認知機能の低下があるものの、基本的な日常生活では問題がみられないため、認知症の診断基準をみたさない軽度認知障害といわれる状態があります。そのために、早期発見による対応が重要となります。
  • 認知症疾患医療センター等の医療機関による診断が基本になりますが、職場や家庭での気づきがあった場合、若年性認知症に関するニーズに合った関係機関やサービス担当者との調整役である「若年性認知症支援コーディネーター」に相談することが第一歩です。

3.職業上の配慮

  • 若年性認知症を発症した者の職場定着を進める場合、本人の困り感を踏まえて、地域障害者職業センター等の就労支援機関では高次脳機能障害の支援ノウハウを活用して支援します。
  • 異なるのは、病気の進行可能性を踏まえた支援計画がポイントとなること、高次脳機能障害は発症が明確で医療とつながっているため、障害特性等に関するリハビリテーションの状況等の医療情報を基にした支援が行える場合が多いですが、若年性認知症は医療との関わり方が様々であるため、障害の捉え方から整理する場合もあります。
  • また、雇用継続を進める上では、若年性認知症を発症した者とともに働くことについて職場の理解が必要となるため、若年性認知症支援コーディネーターの協力を得て、若年性認知症についての基礎知識を取り上げた社内研修を実施するとよいでしょう。

支援の例

  • 若年性アルツハイマー型認知症の疑いとの診断を受けた在職者に対し、高次脳機能障害支援拠点病院及び地域障害者職業センターの支援により、記憶障害の補完方法を習得するとともに、職場にも症状を踏まえた職業生活の見直しを相談し、洗車業務担当へ配置転換がなされ雇用継続に至った。
  • 若年性認知症の診断を受けたが、雇用継続について職場と相談するも不調であったため退職となった。退職後、ハローワーク、地域障害者職業センターと相談し、「仕事内容を絞り込み、手順の確認をきちんと行えば、できる仕事はある」と自信を得て再就職活動を進め、障害を開示の上、ジョブコーチ支援事業を活用し、清掃・シーツ交換等の介護補助作業での再就職に至った。

4.資料

「若年性認知症を発症した人の就労継続のために」(2016年)の表紙画像

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