認知症は一般的には高齢者に多い病気ですが、年齢が若くても認知症になることがあり、65歳未満で発症した場合には「若年性認知症」とされます。
65歳以上で発症する老年期認知症と病気としては同じであり、医学的には大きな違いはありません。しかし、「若年性認知症」として区別するのは、この世代が働き盛りで家庭や社会で重要な役割を担っており、病気によって支障が生じると、本人や家族だけでなく、社会的な影響が大きいためです。
さらに、若年性認知症の人とその家族は、病気の特性と社会的な背景から孤立しやすく、就労や家事、育児などの複雑な課題に直面しやすく、適切な支援を受けないまま、疲弊している場合も少なくありません。
(齊藤千晶「令和6年度版障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト」より)
【2017年度から2019年度に実施した若年性認知症の調査結果】
・全国で3.57万人と推計されました。
・最初に気づいた症状
「物忘れ」(66.6%)、「職場や家事などでのミス」(38.8%)
・若年性認知症の原因となる疾患
①アルツハイマー型認知症:52.6%
脳の神経細胞が徐々に減って、正常に働かなくなる病気。
②血管性認知症:17.1%
脳卒中(脳梗塞や脳出血)などに引き続いておこる。身体症状がみられることが多く、感情や意欲が乏しくなる。
③前頭側頭型認知症(ピック病):9.4%
脳の前方部分(前頭葉や側頭葉)が縮むことによりおこり、同じ動作を繰り返す、自制力の低下、情緒や人格面の障害が特徴。
④レビー小体認知症/パーキンソン病による認知症:4.1%
脳の神経細胞の中に「レビー小体」ができ、ふるえや動作が遅くなるなどパーキンソン症状、幻視、妄想、立ちくらみなどが特徴。
⑤その他:頭部外傷による認知症、アルコール関連障害による認知症などがある。
(2020年7月 地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター研究所 プレスリリース「日本医療研究開発機構 認知症研究開発事業による研究結果」より)
○若年性アルツハイマー型認知症の疑いとの診断を受けた在職者に対し、高次脳機能障害支援拠点病院及び地域障害者職業センターの支援により、記憶障害の補完方法を習得するとともに、職場にも症状を踏まえた職業生活の見直しを相談し、洗車業務担当へ配置転換がなされ雇用継続に至った。
○若年性認知症の診断を受けたが、雇用継続について職場と相談するも不調であったため退職となった。
退職後、ハローワーク、地域障害者職業センターと相談し、「仕事内容を絞り込み、手順の確認をきちんと行えば、できる仕事はある」と自信を得て再就職活動を進め、障害を開示の上、ジョブコーチ支援事業を活用し、清掃・シーツ交換等の介護補助作業での再就職に至った。