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職場の安全のために労働者の精神面の安定を重視した取組

医療法人社団知己会 龍岡ケアセンター

労働災害防止・すべての障害

改善前の状況

 高齢者施設において、社内で安全衛生活動を行うにあたり、障害のある社員にどのように伝えて理解してもらうかのノウハウがなかった。また、障害のある社員においては、体調不良になっても本人からの申し出がなかったり、個々の精神面の状態の見極めが難しい場合もあった。
 このような中で、社員の良好な健康状態を維持しながら、社内の安全面の対策について検討していくことが必要であった。

改善策

〇安全衛生委員会
職場における労働災害を防止し、職場の安全を確立していくために法人全体の取組として以下のことを確認した。
→職場の安全のためには、社員それぞれが集中力を維持していくことが必要である。
→集中力を維持していくためには、精神面の安定、良好な健康状態を保持することが必要である。
→精神面の安定、良好な健康状態を保持するためには、社員同士が積極的にコミュニケーションをとりあうことが重要である。
〇積極的な声かけや観察・社員同士のコミュニケーション
・周囲から障害のある社員に対して積極的に声かけを行い、体調確認や仕事の進め方等について確認を行うようにした。
・仕事に関する指導を行う場合は、障害のある社員の1日の業務の流れを観察し、本人の視点に立った危険予知を取り入れながら行った。なお、指導にあたっては、障害のある社員1人に対して1人の指導担当者を決め、コミュニケーションを取りながら対応するようにした。また、避難訓練や防災、感染症に関する講習などにおいても、障害のある社員が理解できるように指導担当者がサポートを行うなどの配慮を行った。
・社員が調理場で包丁を使う場合、安全な包丁の使用方法の指導だけではなく、本人が集中力を維持できる状態にあるか、精神面や健康面に問題はないかということが重要であることに注目して本人の状況を確認した。
〇健康面・衛生面の配慮
・個々の特性に応じて、ストレスチェックの際は質問項目が理解できるよう、指導担当者等が質問項目を一問ずつ説明するなどの配慮を行ったり、本人の同意を得た上で個々の受診状況について産業医を交えて社内で共有した。
・体調不良となった場合に休職しやすくするため、就業規則において休職に関する規程を改定し、個々の健康状態により、復職計画を立てやすくした。

改善後の効果

〇企業全体への効果
・指導担当者等自らの、積極的な声かけやコミュニケーションを取ろうとする意識が高まった。
・職場全体が自分自身だけではなく、他の社員の健康にも気を配ることができるようになったり、障害のある社員の視点に立って安全面を考えることができるようになった。
・清掃道具を壊れるまで使い続けてしまう社員に対しては、その都度手本を見せながら改善のための指導を行うとともに、事故を未然に防止するため周囲の社員が道具を毎日点検し、破損の恐れのある道具は早急に交換するなどの対処を行った。
〇障害のある社員への効果
・職場内でコミュニケーションが図られることで、障害のある社員も安心して仕事に取り組むことができるようになった。

 以上のように職場内で皆が積極的に声をかけ合ったり、コミュニケーションを充実させることで、事故や怪我を未然に防ぎ、障害のある社員自身も安心して仕事に取り組むことができるようになるなど、企業全体で安全衛生の意識を高めることにつながった。
 また、これらは、技能実習生や外国籍の社員などに対する効果的な指導にも相乗効果として表れている。

※精神障害のある社員に対する具体的な取組は以下のリンクをご参照下さい。

社員の声

Aさん(清掃担当)

「安全面で気を付けていることは、入居者にぶつからないようにすることや、清掃のため居室に入るときには、『失礼します・掃除に入ります』とあいさつしたり、入居者に声をかけたりしています。また、道具の整理整頓を心がけたり、居室内に人が多いときは掃き掃除のみにするようにしています。
 滑って事故が起きないように、モップを絞っても湿っていたらまた絞るようにして事故が起きないように心がけています。」

伊藤 浩士さん(清掃担当)

「安全面で気を付けていることは、入居者にぶつからないようにすることや、床が濡れているのを見つけたら、入居者が滑って怪我をしてはいけないので、すぐに拭くようにしています。
 健康面では不安はありません。今後も食事のバランスに気を付けて健康を維持したいです。また、仕事のキリのよいところで休憩するなど、自分で休憩をとるタイミングを工夫しています。」

企業の声

「障害者の雇用を安定させるためには、今後も障害のある社員への支援を充実することが必要ですが、一方で、現場の指導担当者自身にストレスがたまらないように、あるいは障害のある社員への指導を安全に行ってもらえるように、定期的に現場の指導担当者の話を聞くことも必要と感じています。」

    事務局長 中山 雅靖さん         施設清掃係リーダー 長谷 正行さん