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1.障害者雇用の基礎理解 (2)障害者雇用の意義・障害者雇用のメリット

Q なぜ障害者雇用を進める必要があるのでしょうか?また、障害者雇用を行うことでどのようなメリットがありますか?

A 法的義務のほか、共生社会の実現などのためにも障害者雇用を進めていくことが必要です。また、障害者雇用を進めること
  で、障害者だけではなく誰もが働きやすい職場が実現できます。

障害者雇用を進めるためのキーワード

法的義務

障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者の雇用を促進し、障害者の職業の安定を図ることを目的に昭和35年に制定された法律)では、事業主に常時雇用している労働者の数に法定雇用率(令和5年4月1日から民間企業は2.7%(ただし、令和5年度中は 2.3%に据え置き、令和6年4月から2.5%、令和8年7月から2.7%と段階的に引き上げることとしています。))を乗じて得た数以上の障害者を雇用することを義務づけています。義務を履行しない場合は「雇入れ計画作成命令」などの行政指導を受けることとなります。

共生社会の実現

障害のある人も障害のない人たちと同じように生活、活動できる「完全参加と平等(1981年国際障害者年のテーマ)」の社会を実現することが極めて重要な課題です。そのため、障害があっても働く意欲と能力をもっているならば、誰もが職業を通して社会参加できる「共生社会」をつくっていく必要があります。

企業の社会的責任、法令等の遵守

企業は、利益を追求するだけでなく、顧客、投資家、労働者、地域社会などのステークホルダー(利害関係者)との適切な関係の下に経営を行っていくことが、企業の社会的責任(CSR)として求められています。また、環境問題への取組、地域貢献、女性の登用などと同様に、障害者雇用は、人材活用、障害者雇用率などの法令等の遵守(コンプライアンス)にかかる事項として、企業において真剣に取り組む必要があります。

ダイバーシティ&インクルージョン(多様な人材の活用)

社員一人ひとりが持つさまざまな違い(性別・国籍・年齢・学歴や職歴など)を受け入れ、個々の特性が活かされることで企業の競争力に活かそうという考え方で、組織の開発に欠かせない視点のひとつであり、障害者雇用も同様に考えていく必要があります。

働き方改革実行計画

平成29年3月28日に政府の働き方改革実現会議で決定された働き方改革実行計画には、「障害者等の希望や能力を活かした就労支援を推進し、障害の特性等に応じて活躍できることが普通の社会、障害者と共に働くことが当たり前の社会を目指していく必要がある。」と盛り込まれています。

障害者雇用のメリット

企業トップが語る障害者雇用のメリット

障害者を雇用することにはさまざまなメリットがあります。企業のトップから、例えば以下のような声をうかがっています。障害者本人が戦力として活躍しているというだけでなく、企業全体の職場環境の改善や業務効率化につながったという声が多くありました。

(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構 平成31年3月発行「障害者の職場定着と戦力化」より

トップの声1 障害者が戦力として活躍している
・会社にとって、なくてはならない戦力となっている。
・仕事ぶりはゆっくりだが、丁寧なので、間違いが少なく信頼できる。
・勤怠が安定しており、一定の作業量を確実にこなしてくれる。
・地道な作業に真剣に取り組んでくれる。
・人手不足の中、戦力として会社を支えてくれている。

トップの声2 職場環境の改善につながった
・障害者が働きやすくなるよう行った環境整備が、障害のない社員の働きやすさにもつながった。
・ひたむきな姿勢を周りの社員が応援することで、職場全体の雰囲気が良くなった。
・まじめな勤務態度や仕事ぶりがほかの社員へのよい刺激となっている。
・障害のある社員がいつも笑顔でいるため、職場が明るくなった。
・社員が気配りの心を持つようになった。
・上長のマネジメント能力が向上している。
・障害のない社員の業務負担が減り、働き方改革につながった。

トップの声3 業務効率化につながった
・特定の作業をまかせることによって、ほかの社員が本来業務に専念でき、会社全体としてのパフォーマンスがあがっている。
・雑多だった作業プロセスをシンプルにする検討のきっかけになった。
・これまで職人化していた業務について、誰でもその業務ができるよう工夫するようになった。
・自身の仕事のやり方や姿勢を見直すきっかけとなった。 

障害者の職場定着と戦力化 書籍画像

他にも以下のような声をうかがっています

・相手のことを考えながら支え合う職場作り
障害のある社員が働きやすいように配慮などを行うことで、職場の中で皆が支えあうという意識が芽生えた。

・わかりやすい作業手順の整理
障害のある社員にもわかりやすいように作業手順の整理、マニュアル化を行うことで、指導担当者が代わっても対応しやすくなった。

・円滑なコミュニケーションの確立
障害のある社員にわかりやすいように伝えたり、社員の言いたいことを引き出していくなど、コミュニケーションについて配慮することで、職場全体の円滑なコミュニケーションの確立につながった。

・安全意識の向上
障害のある社員の安全対策や緊急事態への対応などを整備することで、職場全体の安全意識の向上につながった。