てんかんは反復するてんかん発作を主症状とする慢性の大脳疾患です。
てんかん発作は、大脳ニューロン(神経細胞)から出される過剰な放電によって生じます。発作の症状は多彩ですが、個人の発作の症状はほぼ一定です。
てんかんのある人については、病状等によって、精神障害者保健福祉手帳(1級~3級)の対象となります。
知的障害や脳性まひ・脳腫瘍・脳梗塞等の脳原性の障害・疾患の場合にてんかんが重複することがあり、療育手帳や身体障害者手帳を所持している人もいます。
【発作が起こった時の対応】
てんかん発作に際しては、発作の状態に即して適切に対応する必要があります。
多くの場合、てんかん発作は、数十秒から数分で終わります。発作が収まった時点で本人の表情や発語、気分を確認した上で、状態に応じて休ませてください。
○前兆がある場合
光が見える、頭痛がするといった本人にしかわからない症状(前兆)が起こった場合には、自身で椅子に座る、しゃがむといった危険を避ける行動を取りますので、見守ってください。
○意識の有無にかかわらず姿勢は保持されるが、動作が止まったり、状況にそぐわない行動をとる場合
発作のために、いったん行為が止まったり、歩き回ったり、手足を動かしたり、声を出したりすることもあります。
周囲に危険物があれば、それを取り除き、危険に気を配りながら回復するのを待ってください。
○意識が消失し、姿勢が保持されず、けいれんが起こる場合
いったん生じたけいれんは、体を揺すったり、抱きしめたり、大声で呼びかけたりしても、止めることはできません。けがをしないように周囲の危険物を除いた上で、後頭部の下にタオルなどをあて、毛布や敷物の上に寝かせてください。
いびきのような大きな呼吸をする場合には、気道を開くためにあごを押し上げるように引き上げてもかまいません。けいれん発作が収まった後には、顔を横向きにし、回復を待ちます。
○病院等への連絡が必要な場合
激しい全身の「けいれん」発作が5分以上続いて止まらない場合には、救急車を要請してください。1回の発作の後、続いて発作が起こる場合や2時間以上経過しても覚醒しない場合には、通院している病院(主治医)に連絡を取ってください。
てんかんのある人については、厚生労働省の定めた「合理的配慮指針」において、「精神障害」の項に含まれており、具体的には、「業務指導や相談に関し、担当者を定めること」「出退勤時刻・休憩・休暇に関し、通院・体調に配慮すること」「本人の状況を見ながら業務量等を調整すること」「本人のプライバシーに配慮した上で、他の労働者に対し、障害の内容や必要な配慮等を説明すること」などが示されています。
薬の処方や検査のための定期的な受診は、最も大切なことですので、通院のための休暇の取得や職務の進め方などに配慮が必要です。
シフト勤務や夜勤などの勤務時間帯や残業は生活や体調に影響を及ぼします。本人の意向とともに、場合によっては主治医の意見も踏まえた配慮が大切です。
てんかん発作があることだけを理由に難しいとする仕事は基本的にはないと考えられますが、本人や周囲の従業員が事故にあったり、けがをしないように、個人の状況を踏まえ、てんかん発作の誘発要因や頻度・程度などについて考慮し、高所作業や重量物等の運搬、機械や装置、自動車の運転等、職務に制限を設けたり、作業手順や安全装置、作業現場などの職場環境を整えることが必要だと考えられる場合もあります。
法律上、障害や病気の状態によって資格・免許取得の条件を満たさない場合に適性を欠く(「相対的欠格」といいいます。)と判断されることがあり、てんかんのある人も、法律によっては、「相対的欠格」と判断される場合があります。
てんかんのある人の自動車の運転免許の取得の可否については、病状等に応じて、個別に判断されることになっており、一定の条件を満たしていれば、取得が可能です。
・てんかん情報センター
(独)国立病院機構静岡てんかん・神経センターが、てんかんについての情報を適切に提供することを目的に運営しているサイト
・日本てんかん協会(波の会)
てんかんに対する社会的理解の促進、てんかんに悩む人たちの社会援護活動等を行っている団体のサイト