特集(メールマガジン第117号)
【求】ポリテクカレッジの学生が制作した実習成果物の紹介 ~地域の企業が抱える課題解決等のための連携~
機構が運営するポリテクカレッジ(※1)には「専門課程(※2)」と「応用課程(※3)」のそれぞれ2年間の訓練課程があり、いずれも学科目に加え、実技科目を豊富に行う実学融合を特長としています。
専門課程では「総合制作実習」、応用課程では「開発課題実習」として、地域企業の製造現場で生じた課題や社会的に関心の高い課題等をテーマとした制作実習を実施しています。
総合制作実習および開発課題実習は、学生が担当テクノインストラクター(職業訓練指導員)の指導のもと、日々の授業や実習を通して習得した技能・技術を活かし、各課程の修了に向けて訓練の集大成として取り組むものです。
毎年、それら実習成果物の中から特に優れたものについては機構内において表彰することとなっております。
今回は令和4年度における受賞した実習成果物のうち、最優秀賞を受賞した2作品を中心にご紹介します。
実習成果物の受賞一覧(令和4年度)
1.総合制作実習の成果物
①最優秀賞「2ストロークエンジンの設計・製作」
福山職業能力開発短期大学校(生産技術科)
②優秀賞「伝統技術の復元~機織機(はたおりき)の製作~」
関東職業能力開発大学校(生産技術科)
③優秀賞「島ノ星山ランドスケープ」
島根職業能力開発短期大学校(住居環境科)
④特別賞「ゼロカーボンシティ実現に向けた木造倉庫の開発」
秋田職業能力開発短期大学校(住居環境科)
⑤特別賞「生体信号計測による休憩間隔最適化システムの開発」
千葉職業能力開発短期大学校(電子情報技術科)
⑥特別賞「軸受検査装置の設計製作~ならい機構を利用したロボットハンドの開発~」
北陸職業能力開発大学校(生産技術科)
⑦特別賞「低燃費自動車の製作」
石川職業能力開発短期大学校(生産技術科)
2.開発課題実習の成果物
①最優秀賞「金属フィルタの自動製造装置の開発」
関東職業能力開発大学校
(生産機械システム技術科・生産電気システム技術科・生産電子情報システム技術科)
②優秀賞「SDGsを支援する海洋ログシステムの開発」
沖縄職業能力開発大学校
(生産機械システム技術科・生産電気システム技術科・生産電子情報システム技術科)
③特別賞「食品工場の工程改善~自動煮玉子投入装置の開発~」
東北職業能力開発大学校
(生産機械システム技術科・生産電気システム技術科・生産電子情報システム技術科)
④特別賞「軸テープカットマシーンの開発」
四国職業能力開発大学校
(生産機械システム技術科・生産電気システム技術科・生産電子情報システム技術科)
総合制作実習【最優秀賞】
2ストロークエンジンの設計・製作(ポリテクカレッジ福山)
総合制作実習部門では、福山職業能力開発短期大学校(ポリテクカレッジ福山)の「2ストロークエンジンの設計・製作」が最優秀賞に選ばれました。
この実習成果物は、「全日本EV&ゼロハンカーレースin府中」の「手づくりエンジン部門」への出場を目ざし、排気量68ccの水冷式ストロークエンジンの製作に取り組んだもので、機械設計、精密測定、切削加工、NC加工、CAD/CAM等の授業で学んだことを活かしたテーマです。
本大会は、開催地の広島県府中市が「若者にものづくりに対する興味をもってほしい」、「ものづくりの町の府中市を知って地元企業に就職してもらいたい」との思いから、商工会や地域産業界と一体となって開催するものであり、ポリテクカレッジ福山も地域のものづくり人材を育成する機関として積極的に参加し、地元の福山大学とも連携を取りながら大会を支えています。
14年の歴史がある大会ですが、今までどのチームもエントリーできていない「手づくりエンジン部門」に4台のエンジンを製作し、エントリーしました。
製作したエンジンを自作のカートに搭載し、油や水漏れ、異音等なく正常に走行することができました。また、ダートコースに対しても十分な馬力があり、アクセルを全開にする必要がないほどの加速力があります。実用的に走れる自作エンジンが製作できていることに地元企業からも驚きと高い評価をいただきました。
地元の新聞社からも取材されるなどポリテクカレッジのものづくり力のPRにもつながっており、ポリテクカレッジ福山にはゼロハンカーを製作したいと希望する学生が毎年入校しています。
開発課題実習【最優秀賞】
金属フィルタの自動製造装置の開発(関東ポリテクカレッジ)
開発課題実習部門では、関東職業能力開発大学校(関東ポリテクカレッジ)の「金属フィルタの自動製造装置の開発」が最優秀賞に選ばれました。
この実習成果物は、地元企業からの依頼により、自動車エンジン冷却装置に使用される金属フィルタの自動製造装置を開発したもので、CAD/CAM/CAEを主体とした製品設計技術や製品製造技術、PLCを主体とした自動化機器制御技術、コンピュータ制御を主体とした電子回路技術や画像処理技術等、各科でこれまでに習得した複数の技術要素が求められるテーマとなっています。
金属フィルタの製造・加工において、手作業による生産では限界があり、作業の歩留まりや作業員の技量によるばらつき等の問題もふまえ、加工から組立て、検査までの工程を自動化して量産したいとの地元企業からの思いを受け、生産性向上および人手不足を解決するための装置開発に至りました。
開発した装置は、供給、打ち抜き、丸め加工、スポット溶接、製品検査および格納までの一連の工程を自動化したもので、一連の動作によるタクトタイムは開発目標60秒に対し20秒を実現しており、高い完成度となっています。また、完成した部品検査は、画像処理技術、AI技術により従来の手作業から自動化しており、部品の溶接位置を100%検出できる点も高く評価されました。素材がステンレスであることから、各工程間の搬送をエア搬送というオリジナルなアイデアで実現しています。
ほかにも優れた実習成果物がたくさんあります!
各ポリテクカレッジで制作された実習成果物の詳細については、ここでは紹介していないものや過去の受賞作品も含め、ポリテクカレッジホームページ(※4)でも公開していますのでぜひご覧ください。