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5.障害特性と配慮事項 (1)視覚障害

1 視覚障害とは

 視覚は、視力、視野(ものの見える範囲)、色覚(色の識別機能)、光覚(光の程度を感じる機能)に分けられます。身体障害者福祉法では、このうち視力と視野に一定以上の障害がある場合を視覚障害と定めています。一人ひとりの見え方はさまざまです。

2 障害特性

視力

  • 視覚障害者の中には、視覚を全く活用できない「全盲」の人と、光を感じる、ないしは何らかの保有視力がある「弱視」の人がいます。近年、弱視を「ロービジョン」ということも多くなっています。
  • 身体障害者手帳では、最も軽度な等級は6級で、「良い方の眼の視力が0.3以上、0.6以下、かつ、他方の眼の視力が0.02以下のもの」であり、最も重い等級は1級で「良い方の眼の視力が0.01以下のもの」です。

視野

  • 障害のない人の視力は、視野の中心(中心視野)が最もよく見え、視野の周辺に向かうほど見えにくくなっています。視力表による測定は、中心視野の視力を測っています。
  • 職業生活では、中心視野が見えているかどうかが重要です。中心視野が片眼だけでも確保されていれば、目の前の危険物に気づき易くなり、伝票やパソコンの文字を自分の眼で見て、読み書きすることができるからです。下方の視野が両眼とも欠けている場合は、手元の書類やパソコンのキーボードが見えにくかったり、歩行時の足元が見えにくいため歩きにくいと感じたりするでしょう。
  • 視野の障害のうち最も軽度の等級は5級で、「両眼による視野の2分の1以上が欠けているもの」となっています。
  • 視野障害の視野の欠損は、疾患の内容や状態によってさまざまです。

視野の欠損の状態の例は以下の図のとおりです。

図1の画像

図1:障害のない人の視野


図2の画像

図2:視野の中心部の視力は保たれていますが、周辺部が見えていません。一度に見える範囲は限られていますが、視線を周辺へ意識的に移して確認することで、安全に歩くことができます。


図3の画像

図3:中心視野が見えにくく、見たいものが見えないと感じます。周辺部の視力は保たれていますので、歩行時の足元や事務の仕事での手元の書類は見えています。


図4の画像

図4:視界の右下が欠けている状態です。中心視野が保たれていますので視力検査の成績は良いのですが、右下に存在するはずの自転車の存在になかなか気付きません。図4のように見えてしまうのは、実際には見えていない視界を、その周辺の視界から得られる情報で埋めてしまう機能を人の脳が備えているためです。


色覚・光覚

色覚や光覚の機能に支障が生じると、以下のような見えにくさがあります。社員から申出があった場合は、具体的な特徴を確認した上で、支障のないように配慮することが必要です。

  • 色覚とは色を識別する機能で、特定波長の色が認識できなかったり、特定の色が別の色に見えたりします。
  • 光覚とは光の程度を感じとる機能で、薄暗い光に次第に慣れる現象を暗順応といい、暗順応に支障があると暗いところでは物が見えにくくなります。一方、まぶしさに次第に慣れる現象を明順応といい、明順応に支障があると、明るいところでは見えにくくなりまぶしさを強く感じます。そのため、遮光眼鏡等で光を遮断することが必要となってきます。

3 職業上の配慮

 視覚障害者が従事する職業には、あんまマッサージ指圧師、医師・弁護士等の専門職、義務教育や高等教育の教員、IT等のエンジニア、経理・人事等の事務職、ビル清掃員、工場作業員、調理作業員などの事例があります。以下のような配慮により、今後も視覚障害者の雇用の促進が望まれます。

安全面や疲労度を考慮した環境整備

  • 勤務時間の調整や休憩時間の確保を行う。
  • スイッチなどのボタンや手すりに点字シールを貼る、机の角にクッション材を貼る、整理整頓を心がけ安全性を確保することや部屋の入口近くに席を設けるなど移動しやすいレイアウト設定などの配慮を行う。

コミュニケーション

  • 呼びかける際は、相手の名前を呼び自分の名前も言う。席が近くの社員は、席を離れるときに一声かける。
  • 物をさす場合は、「これ、それ、ここ、そこ」ではなく、「右」「左」「前」など、具体的に伝える。また、時計の文字盤を例にとって「9時の位置に電卓があります。」(クロックポジション)と伝えることも有効です。

就労支援機器

  • 文字を拡大する拡大ルーペ、拡大読書器、スマートフォンやタブレット端末のカメラ機能、広範囲の視角を限られた視野に収めて見ることができるマイナスルーペ
  • 文書を読む際の目の負担を軽減し効率よく読めるタイポスコープ
  • パソコン上のテキストデータを音声で読み上げる画面読み上げソフトなど

(就労支援機器)
就労支援機器のホームページに障害者の就労を支援する機器を掲載しています。
中央障害者雇用情報センターでは相談を受けたり、貸し出し可能な機器の貸し出しを行っています。 

拡大読書器

画面読み上げソフト

4 資料

障害者雇用マニュアル コミック版  No.1  視覚障害者と働くの表紙画像
視覚障害者の職場定着推進マニュアルの表紙画像
合理的配慮動画のジャケット画像
マニュアル、教材、ツール等No.62 目が見えなくなってきた従業員の雇用継続のために(企業の人事担当者、管理者の皆さまへ)の表紙画像

障害者雇用事例リファレンスサービスの事例から