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「生涯職業能力開発体系」の整備から始まった人材育成—技能の伝承や後継者の育成を目指した兵庫県板金工業組合の挑戦

二人三脚で人材育成の取り組み

現在の企業経営において、技能の伝承や後継者の育成は企業経営の大きな課題となっており、計画的な人材育成を目指すためにも生涯職業能力開発体系の活用は大いに効果を発揮するものです。
今回は、兵庫センターと二人三脚で、生涯職業能力開発体系を活用して人材育成に取り組まれた兵庫県板金工業組合の組合事務所を訪ね、横畑理事長はじめ、4名の副理事長と事務局長にお話を伺いました。
阪神・淡路大震災にも耐えた組合事務所内では、温かい播州弁が飛び交っていました。

兵庫県板金工業組合事務所

兵庫県板金工業組合幹部の皆さん(中央が横畑理事長)

建築板金技能を次世代に伝えるために

兵庫県板金工業組合は、建築板金業を営む企業・事業所・個人が加盟する団体で昭和42年に設立され、板金加工業の経営の安定と合理化の実現のために、技術向上のための教育活動や指導をはじめ、さまざまな活動を行っています。

業界の現状や課題と人材育成の取り組み経過等を事務局長から伺いました。

「板金といえばすぐに自動車を想像される人が多いのですが、私どもの建築板金は建物を作るプロ集団です。伝統建築物や近代の建築に欠かせないものでありながら、残念なことに3Kと呼ばれる世界で、若い人からは敬遠される職場です。我々の悩みは、やはり次の世代にどうやってバトンを渡していくかということに尽きます。個別にその問題に取り組むのは困難ですから、組合としてどう対応していくかということになり、人材育成の相談や援助を行っている兵庫センターに相談しました。人材育成が緊急の課題と言いつつも、具体的に明文化した方針を持っていなかったので、兵庫センターの協力を得て、人材育成を段階的かつ体系的に能力開発を実施するための道しるべとなる生涯職業能力開発体系を紹介していただき、人材育成に向けた取組を行っています。」

生涯職業能力開発体系を整備した効果

生涯職業能力開発体系

3年前、兵庫県板金工業組合は、兵庫センター主催の人材の高度化や育成を目的とした研究会に参加しました。この研究会において、まず取り組んだことは仕事の明確化です。かつては厳しい修行の中で「盗んで覚えろ」とまで言われた、いわゆる仕事のカンやコツ等を含む技能・技術及び知識を明確にした生涯職業能力開発体系(仕事の体系)を作成しました。また、同時に能力開発・教育訓練に関するアンケートやヒアリング調査を行い、その結果から要望が多い教育訓練コースのカリキュラムを開発し、1年後の平成19年12月には組合の課題に合った「建築板金技能講座」を実施しました。内容は板金技能検定試験に役立つ展開図面の作図など、板金加工技術のノウハウを2日間で習得しようというものです。この講座には若手、中堅に混じって2人のベテランが参加しました。人に教えるだけの技術を十分に習得していても教え方のテクニックが分からなかった人達から「どのように教育訓練していくか」という課題が明らかになったという声があがったことで、熟練技能者が指導すべき技能の指針が見えてきました。また、従業員レベルで他社とのネットワークもでき、それに伴い会員会社の教育訓練に対する姿勢も前向きになってきました。年間職業訓練計画を立て計画的に取り組む会社も出てきました。生涯職業能力開発体系の一つである、「研修の体系」の活用が功を奏したといえます。

今後の展望

横畑理事長

「職人の世界ですからみなさん大変個性的で、一つの方針が見えてきても組合としてまとめていくのはなかなか骨が折れます。しかし、生涯職業能力開発体系に基づいて作成したカリキュラムによって組合の全体像が見えるようになり、課題が明確になってきましたので、今後も兵庫センターに積極的に相談していきたいと思っています。技能の伝承ということでは、指導ノウハウの習得がポイントになるので、兵庫センターには引き続き指導法も含めた教育訓練の手助けをお願いしたい。日本古来の技能・技術を未来に伝えていくために組合も頑張ります。長いおつきあいをどうぞよろしく」と、最後に事務局長が組合幹部の皆さんの思いを代弁し、話を締めくくって下さいました。

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