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大学校の受託研究制度を利用して融雪技術を製品化。共同の力で地域産業の活性化を目指します。

はじめに

東洋興産株式会社

受託研究及び共同研究は、職業能力開発総合大学校、職業能力開発大学校及び職業能力開発短期大学校(以下、「大学校」という。)において、民間企業等との技術協力により多様なニーズに対応した製品開発や研究を行うものです。大学校では、こうした産学連携の推進を通じて得られた成果は、産業界の生きた教材として訓練コースの開発やカリキュラム内容の充実等に活かされています。

今回は『製品化を目指したロードヒーティングシステムの開発』というテーマで、東北職業能力開発大学校(以下、「東北能開大」という。)の受託研究制度を活用された東洋興産株式会社をご紹介します。

「石屋だからできること」を模索し続け40年

齊藤義郎社長(左)と齊藤順一朗会長(右)

杜の都仙台からJR仙山線に揺られること25分。「愛子」と書いて「あやし」と読みます。今回お訪ねした東洋興産株式会社は、その愛子の名産「愛子石(あやしいし)」の採掘と加工販売の会社として1970に創業されました。以来40年、石材の製造業としての立場から、廃棄物を原料とした溶融スラグ石材による環境保全型人工石の開発や建設資材としての利用技術の研究開発を続けてきました。今回インタビューに応じてくださったのは創業者齊藤順一郎会長と2代目の齊藤義郎社長のお二人。現在では融雪技術開発の第一人者として各界から熱い視線を浴びていますが、齊藤会長は「私どもは石屋ですから、石屋としてどうやって社会に貢献できるか、そのことを考え続けてきただけのこと」と、あくまでも謙虚です。お二人から「石屋」という言葉が飛び出すたび、かえってそこにはプロとしての誇りと自信があふれていました。

受託研究への取組み

製品化されたロードヒーティングシステム回路の前で

「どうして石屋がロードヒーティングなのかと思われるでしょう。石屋ですから石畳も作ります。ところが雪深い自治体に話を持っていきますと『石畳もいいけど3ヶ月も4ヶ月も雪の下で見えないのじゃもったいないなあ』なんてことになるわけです。ここに融雪機能を持った石畳のヒントがありました。」と齊藤会長。

「実用化できるシステム開発のために暗中模索の日々が続きましたが、インターネットを通じて、ビルや家屋の結露防止のために発熱塗料を開発していた職業能力開発総合大学校の坪田実先生の存在を知りました。早速、研究室を訪ねたところ気さくに話を聞いてくれるどころかアイデアも示唆してくれました。この出会いがきっかけとなって平成15年6月から坪田先生とともに『導電性水系発熱塗料』の共同研究が始まりました。そして、坪田先生から東北能開大を紹介していただき、平成18年には東北能開大と『ロードヒーティングシステム回路』の共同研究を開始、翌19年には『製品化を目指したロードヒーティングシステムの開発』をテーマに受託研究を申請しました。東北能開大との研究成果として、平成20年10月には機械化した製品を世に出すことが出来ました。実証試験を兼ねて20件ほど設置していますが、大きなクレームもなく、受託研究は大きく花開こうとしています。」

「とにかく東北能開大との出会いはラッキーでした。この受託研究制度がまだまだ知られていないのは本当にもったいないと思いますね。東北能開大は『一般の家庭にも使っていただけるよう価格的にも考慮し、簡便なものを開発したい。』という私たちの実用化の思いをまっすぐに受け止めてくれました。基礎研究ではなく実践の中で具体的な方向を示してくださる。それも迅速に。実用化が命の企業にとっては本当に力強い味方です。」齊藤社長が熱く語って下さいました。

これからも長いお付き合いを

ロードヒーティングシステムを導入した石段

「職業能力開発総合大学校や東北能開大と出会い、受託研究の種が蒔かれ花が咲き、雇用・能力開発機構(以下、「機構」という。)の存在力を十分に知った今、機構をもっと活用していきたい。」とお二人が声を合わされました。

「東北能開大の先生方、そして機構のみなさんとはこれからも長いお付き合いをさせて頂くことになると思います。」と齊藤義郎社長。その隣で順一郎会長が大きくうなずきました。愛子石は仙台地方では門柱や造園に使われることが主ですが、全国でも幅広く使われています。名刹法隆寺の参道にも埋め込まれているそうで、作家幸田文さんから「あたたかい石」と評されたことがあるとか。インタビューの間、笑みが絶えることのなかった創業者齊藤順一郎会長に「あたたかい石屋さん」という言葉を贈りたくなりました。

ご案内

受託研究及び共同研究については最寄の大学校(所在地一覧:https://www.jeed.go.jp/location/index.html)にお問い合わせください。